人名用漢字の変遷
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1946年11月16日に、内閣によって告示された当用漢字には、人名に頻繁に用いられる漢字の一部が含まれていなかった。1948年1月1日の戸籍法改正により、当用漢字の範囲に含まれない漢字は新生児の名に用いることができないとされたものの、1951年5月25日、内閣は92字を人名用漢字として新たに指定(人名用漢字別表)。子供の名前に使用したい漢字が使用できないことから親が裁判を行って使用が認められた字(1997年の「琉」、2004年の「曽」など)を人名用漢字に追加していった。また、親が子につける名前の多様化が進んだ結果、人名用漢字別表は次第に数を増やし、2004年7月12日時点で290の漢字が人名に用いることができるようになった。それでも「苺(いちご)」や「雫(しずく)」といった漢字が使えないなど、命名に対する不満の声があった。こうした声を受けて、同年9月27日には488字の大幅な追加がなされた。 2004年9月27日の追加では、沼尻・田尻・野尻などの名字で使われている「尻」や飛驒の「驒」、荏原の「荏」、さらに「焔・錨・鮪・燐・仍・崔・悧・懍・檸・檬・欅・浚・煕・瞑・碼・茗・萃・藺・逍・釐・霖・璋・鰹・鮭・葱・韮・蒜・體・絲・號・黴・莱(旧字体の萊は人名漢字)」などの追加を望む声もあったが追加には至らなかった。 外国人が日本国籍を取得する場合の姓にもこの文字の制限が適用されていたが、2008年12月8日の国籍法改正(2009年1月1日施行)に呼応した民事局長通達によりこの制限は緩和され、「康熙字典の正字」や「国字」も状況次第で使用可能となった。2008年12月31日以前は、「田尻」「小澤」「藪」や「崔・姜・趙・尹」といった、常用漢字や人名用漢字にない漢字を含む苗字にすることはできなかったが、現在はこの制限はなくなっている。なお、この漢字制限が明確に完全撤廃されたのは、2012年7月9日施行の新しい在留管理制度開始からである。 京都大学の安岡孝一は1976年に追加された「沙」の字(現在は常用漢字)が歌手の南沙織の影響を受けていると考えられることを例に、有名人の名前に使われた漢字が人名用漢字の拡大に寄与しているようだと述べた。
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