五上分結
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/12/10 04:14 UTC 版)
五上分結(ごじょうぶんけつ、梵: ūrdhvabhāgīya saṃyojana, ウールドヴァバーギーヤ・サンヨージョナ、 巴: uddhambhāgiya saṃyojana, ウッダンバーギヤ・サンヨージョナ)とは、仏教において衆生を三界における上方の「色界」「無色界」へと縛り付ける「5つの束縛」としての煩悩の総称。「上分」(じょうぶん)とは「上の領域」すなわち三界における上方の「色界」「無色界」のこと。「結」(けつ、巴: saṃyojana, サンヨージャナ)とは「束縛」のこと。
釈迦は五上分結の証知、遍知、遍尽、断捨のため、七覚支を修習すべきと説いている[1]。
内容
Pañcimāni bhikkhave, uddhambhāgiyāni saṃyojanāni. Katamāni pañca:
rūparāgo arūparāgo māno uddhaccaṃ avijjā. Imāni kho bhikkhave, pañcuddhambhāgiyāni saṃyojanāni.比丘たちよ、これら五つの上分結がある。
いかなる五か?色貪、非色貪、慢、掉挙、無明である。比丘たちよ、これが五つの上分結である。
五上分結の内容は以下の通り。
- 色貪(梵: 巴: rūpa-rāga) - 色界に対する欲望・執着
- 無色貪(梵: 巴: arūpa-rāga) - 無色界に対する欲望・執着
- 慢(梵: 巴: māna) - 慢心
- 掉挙(梵: auddhatya、巴: uddhacca) - (色界・無色界における)心の浮動
- 無明(梵: avidyā、巴: avijjā) - 根本の無知
四向四果との関係
五下分結を断って「下分」(欲界)から脱し不還果に達した者が、「上分」(色界・無色界)をも脱し、四向四果における最終段階である阿羅漢果に到達するために、この五上分結を克服することが要請される[2][3]。つまり、この五上分結は(上座部仏教の)修行における最終ハードルであると言える。
到達した境地(果位) | 解放された結 | 苦が終わるまでの輪廻 | |
最大7回、欲界と天界を輪廻する | |||
一度だけ人として輪廻する | |||
脚注
出典
- ^ パーリ仏典, 相応部 46.覚支相応 暴流品, Sri Lanka Tripitaka Project
- ^ 悟りの階梯 - 藤本晃/日本テーラワーダ仏教協会
- ^ パオ森林僧院における教えと修行 日本語訳 pp.33-34
- ^ 中部22 蛇喩経など
関連項目
五上分結
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/04/29 02:21 UTC 版)
詳細は「五上分結」を参照 衆生を色界・無色界(上分)へと縛り付ける結を、五上分結(ごじょうぶんけつ)(巴: uddhambhāgiya-saṃyojana)と呼ぶ。 色貪(しきとん)(巴: rūpa-rāga) - 色界に対する欲望・執着 無色貪(むしきとん)(巴: arūpa-rāga) - 無色界に対する欲望・執着 慢(まん)(巴: māna) - 慢心 掉挙(じょうこ)(巴: uddhacca) - (色界・無色界における)心の浮動 無明(むみょう)(巴: avijjā) - 根本の無知 この5つを絶つことで、四向四果の最終段階である阿羅漢果へと到達できる。 四向四果 (解脱の10ステップ, パーリ経蔵による) 到達した境地(果) 解放された結 苦しみが終わるまでの輪廻 預流 1. 有身見 (無我)2. 疑(教えに対しての疑い)3. 戒禁取(誤った戒律・禁制への執着) 下分結 最大7回、欲界と天界を輪廻する 一来 一度だけ人として輪廻する 不還 4. 欲の貪り(カーマラーガ)5. 憤怒(瞋恚, パティガ) 欲界及び天界には再び還らない 阿羅漢 6. 色貪7. 無色貪8. 慢, うぬぼれ9. 掉挙10. 無明 上分結 三界には戻らず輪廻から解放 Source: Ñāṇamoli & Bodhi (2001), Middle-Length Discourses, pp. 41-43.表・話・編・歴
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