乳酸菌植え付けのタイミング
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/12 14:03 UTC 版)
「マロラクティック発酵」の記事における「乳酸菌植え付けのタイミング」の解説
ムストに乳酸菌をいつ植え付けるかにはいくつか選択肢がある。酵母と同時に接種することでアルコール発酵とマロラクティック発酵が同時に起こるようにすることもあれば、アルコール発酵が終わるのを待ち、澱引きと樽への移し替えを行った後に接種することもある。あるいはこの二つの間のどこかで行う場合もある。いわゆる“自然派”の作り手は培養乳酸菌を用いないが、その場合はワイナリーに生息する菌種や他の菌との優劣などの要因によりマロラクティック発酵はいつでも起きうるものである。どのような醸造法にも利点と欠点がある。 アルコール発酵と同時にマロラクティック発酵を行う利点としては、以下のようなことが挙げられる。 ムスト中の栄養分が多い(ただし酵母が優越しうる) 二酸化硫黄やエタノールの濃度が低いため、乳酸菌が生存しやすい 液温が高い方が乳酸菌の生育と早期のマロラクティック発酵の完了につながる。マロラクティック発酵の適温は20~37℃であり、15℃を下回ると急激に進みにくくなる。ワインが冬の間に樽でセラーに貯蔵されているときは、気温が低いために発酵期間が極めて長くなることがある。 早期にマロラクティック発行を終えてしまえば、それだけ早い段階で二酸化硫黄の添加が可能である。これにより、アセトバクタ―などの有害菌からワインを守ることができる。二酸化硫黄はマロラクティック発酵も阻害するため、乳酸菌の接種をアルコール発酵後に行う場合はマロラクティック発酵が起こるのに十分な暖かさになる早春まで二酸化硫黄の添加ができない。 ジアセチルの生成量が少ない。 欠点としては以下が挙げられる。 グルコースなどの栄養素を酵母と競合することになり、他の微生物とも拮抗しうる。 オエノコッカス・オエニのようなヘテロ型発酵菌の場合、ムスト中に残存するグルコースを消費し、酢酸のような望ましくない副生成物を生成しうる。 アルコール発酵後にマロラクティック発酵を行うことで、これらの問題の大部分は解決できる。特に他の菌種が拮抗すること、および副生成物による劣化に対しては効果が高い。死んだ酵母の細胞が溶菌するために澱から栄養素を得ることができるのも利点の一つではあるが、マロラクティック発酵を完全に完了させるのに十分であるとは限らない。また、早期のマロラクティック発酵による利点(上で挙げた高い温度、発酵の早期完了など)が得られないことは欠点であるといえる。
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