レトロトランスポゾンの種類
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/06/08 03:15 UTC 版)
「レトロトランスポゾン」の記事における「レトロトランスポゾンの種類」の解説
レトロトランスポゾンは、クラスIの可動因子である。そして、末端に長い反復配列を有する「LTR (long terminal repeat) 型レトロトランスポゾン」と、それ以外の「非 LTR 型レトロトランスポゾン」との2つに類別される。LTR 型レトロトランスポゾンの両端には、100 bp 程度から5kb超の長く続く反復配列がある。LTR 型レトロトランスポゾンは、更に、配列の類似性の程度と、遺伝子産物コードの順番との両方に基づいて、Ty1-copia 群と Ty3-gypsy 群との2つに分けられる。大規模ゲノムを有する植物の場合は、Ty1-copia 群及び Ty3-gypsy 群のレトロトランスポゾンのコピーが多数(一倍体 — haploid.「単相体」、「半数体」とも言う — 細胞核当たり数百万コピーまで)発見されるのが普通である。Ty1-copia 群レトロトランスポゾンは、単細胞藻類からコケ植物、裸子植物、被子植物に至る範囲の植物種で、極普通に見られる。Ty3-gypsy 群レトロトランスポゾンも、裸子植物、被子植物双方を含め、同様に広範に分布している。LTR 型レトロトランスポゾンは、ヒトゲノムの約8% を構成する。 非LTR 型レトロトランスポゾンは、「長鎖散在反復配列」("long interspersed nuclear element" LINE) を有するものと「短鎖散在反復配列」("short interspersed nuclear element" SINE) を有するものとの2種類に分けられる。植物では、これらも、多くのコピー数(250,000 まで)が見いだされる。 LINE(長鎖散在反復配列)は、逆転写された RNA 分子を表現する長いDNA配列であり、本来なら RNAポリメラーゼIIにより mRNA(リボソーム上で蛋白質に翻訳されるメッセンジャー RNA)に転写されるべきものである。LINE は、偽遺伝子と呼ばれることもあり、イントロンやプロモータ (promoter) を含まないが、内部に逆転写酵素やインテグラーゼ(integrase. レトロトランスポゾンにおける、トランスポザーゼ — Transposase.「トランスポゼース」とも言う — の等価物)のコードを有し、これにより、そうしたコード部分自身と、その他の非蛋白質コード部分とを併せて、複写できる。LINE は、(狭義のトランスボゾンがするような移動ではなくて)自分自身の複写により移動するので、ゲノムを増大させる。例えば、ヒトゲノムは、約 500,000 の LINE を含むが、これは、ゲノム全体の 21% にあたる。LINE は、DNA鑑定 (genetic fingerprint) で利用されている。 SINE (short interspersed nuclear element) は、逆転写された RNA 分子を表現する短い DNA 配列であり、本来なら RNA ポリメラーゼ IIIにより tRNA、rRNA、その他の核内低分子RNAに転写されるべきものである。SINE は、有効な逆転写酵素蛋白質のコードを持たず、転移は他の可動因子に頼っている。最も良く見られる SINE は、Alu 配列 (Alu sequence) と呼ばれるものである。Alu 配列は、約 300 塩基対の長さがあり、蛋白質コード配列を全く含まず、制限酵素 AluI で認識される("Alu" と云う命名は、これによる)。ヒトゲノム中には 約 100万コピー存在し、その約 11% を占める。LINE 及び SINE は、双方とも、その目的が判明しておらず、「利己的な DNA」とかジャンクDNAとも呼ばれている。SINE は、ヒトゲノムの 13.5% を占める。 ヒト免疫不全ウイルス (HIV)-1 又は ヒトTリンパ好性ウイルス (HTLV)-1 などのような、或る種のウイルスは、レトロトランスポゾンのように振る舞い、逆転写酵素及びインテグラーゼの双方を含む。
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