ヨーロッパ最強の242 A 1型
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「アンドレ・シャプロン」の記事における「ヨーロッパ最強の242 A 1型」の解説
1932年にエタ鉄道が中央車両設計研究所に依頼して開発した車軸配置4-8-2の241 101型機関車は、鳴り物入りで登場したにも関わらず予定通りの出力を達成できず、そればかりか脱線を頻繁に引き起こす問題機関車であった。1942年になってこの機関車の改良の仕事がシャプロンに回ってきた。 もともとの車軸配置4-8-2に対して、台枠の強化などの重量を支えるために従輪が追加されて4-8-4となった。この機関車もやはり複式機関車であるが、内側シリンダーはクランクの強度の関係で1つになり、3シリンダー機である。中央シリンダーが高圧シリンダーで、両側シリンダーが低圧シリンダーである。3シリンダー機であるにもかかわらず、両側シリンダーの位相の差は120 度ではなく単式機関車と同じ90 度に設定されている。これらと中央シリンダーの位相差は135度となっている。また弁装置はワルシャート式で、ポペットバルブではなくウィトロー式複式ピストンバルブを使っている。煙突を縦に3つ並べてそれぞれにキルシャップを装着したトリプルキルシャップが採用された。ボイラー圧力は20 気圧である。 こうしてシャプロンリビルドを施された241 101型は242 A 1型となり、1946年5月18日に完成した。従来シリンダー出力で2,800 馬力であったこの機関車は、120 km/h運転で5,500 馬力を出すことに成功した。最大牽引力65,679 ポンド(292.15 キロニュートン)、平均牽引力46,225 ポンド(205.6 キロニュートン)に達する。これはヨーロッパの蒸気機関車の中では史上最強の出力を持っているものである。出力が大きいにも関わらず、イギリスなどの最優秀機関車に比べても石炭の消費率が低く、またアメリカの最強機関車と比べると出力では多少劣るが機関車重量は大幅に軽い。最高速度などの人目につきやすい記録を出すためだけにチューニングされているわけではなく、実用目的で使いやすいように設計されている機関車であった。 試運転において、既に電化されている区間において普段は電気機関車が牽引しているノンストップの列車を、242 A 1型はその優れた性能で途中駅に停車しながらも所要時間を短縮してみせた。この衝撃は大きく、電気機関車関係者は慌てて大戦前に製造された9101型電気機関車が従来3,900 馬力であったところを4,900 馬力へ増強する改造に踏み切ることになった。またアルゼンチンからディーゼル機関車を買い付けにフランスへやってきた鉄道関係者は、この試運転を目の当たりにして代わりにシャプロン設計の蒸気機関車を購入すると共に、自国の既存機関車にもシャプロンリビルドを施すことになった。
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