ヤマイヌとオオカミ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/25 00:09 UTC 版)
「ニホンオオカミ」の記事における「ヤマイヌとオオカミ」の解説
「ニホンオオカミ」という呼び名は、明治になって現れたものである。 オオカミはオオカメ、オイヌ、オオイヌなどとも呼ばれ、真神伝承の様に神という意味合いを込められているとされるほか、「オオカミ」含めこれらの呼称は「大きな犬」を指した呼称であるとされる。 日本では古来、ヤマイヌ(豺、山犬)、オオカミ(狼)と呼ばれるイヌ科の野生動物がいるとされていて、説話や絵画などに登場している。これらは、同じものとされることもあったが、江戸時代頃から別であると明記された文献も現れた。ヤマイヌは小さくオオカミ(オホカミ)は大きい、オオカミには「水かき」があって泳ぐ、オオカミは信仰の対象となったがヤマイヌはならなかった、などの違いがあった。 このことについては、下記の通りいくつかの説がある。 ヤマイヌとオオカミは同種(同亜種)である。 ヤマイヌとオオカミは別種(別亜種)である。ニホンオオカミはヤマイヌであり、オオカミは未記載である。 ニホンオオカミはオオカミであり、未記載である。Canis lupus hodophilax はヤマイヌなので、ニホンオオカミではない。 ニホンオオカミはオオカミであり、Canis lupus hodophilax は本当はオオカミだが、誤ってヤマイヌと記録された。真のヤマイヌは未記載である。 ニホンオオカミはヤマイヌであり、オオカミはニホンオオカミとイエイヌの雑種である。 ニホンオオカミはヤマイヌであり、オオカミは想像上の動物である。 現在は、ヤマイヌとオオカミは同種とする説が有力である。 なお、中国での漢字本来の意味では、豺はドール(アカオオカミ)、狼はタイリクオオカミで、混同されることはなかった。 現代では、「ヤマイヌ」は次の意味で使われることもある。 ヤマイヌが絶滅してしまうと、本来の意味が忘れ去られ、主に野犬を指す呼称として使用されるようになった。 英語の wild dog の訳語として使われる。wild dog は、イエイヌ以外のイヌ亜科全般を指す(オオカミ類は除外することもある)。「ヤマネコ(wild cat)」でイエネコ以外の小型ネコ科全般を指すのと類似の語法である。 動物学者の平岩米吉は、絶滅前はニホンオオカミと山にいる野犬を混同して両方「山犬」と呼んでいただろうとし、黄褐色の毛を持ち、常に尾を垂れているものがニホンオオカミであるが、両方とも人を噛むという点でどちらも人々から恐れられていただろう、と述べている。 上記の通り、フィリップ・フランツ・フォン・シーボルトが所持していた「ヤマイヌ」は後年の調査で犬との交配個体の可能性が挙げられている。 一説にはヤマイヌの他にオオカメ(オオカミの訛り)と呼ばれる痩身で長毛のタイプもいたようである。シーボルトは両方飼育していたが、オオカメとヤマイヌの頭骨はほぼ同様であり、テミンクはオオカメはヤマイヌと家犬の雑種と判断した。オオカメが亜種であった可能性も否定出来ないが、シーボルト事件で家宅捜索を受けた際に資料が散逸し、詳細は不明となった。
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