メルセデス・ベンツの技術違反嫌疑
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/25 22:00 UTC 版)
「1955年のル・マン24時間レース」の記事における「メルセデス・ベンツの技術違反嫌疑」の解説
メルセデスチームは自主リタイア後、速やかに撤収作業を行いサーキットを後にした。12日早朝にフランス警察が国境検問所に対して、捜査のためにメルセデスの輸送隊を足止めするよう連絡したが、彼らはすでに国境を越えて西ドイツに戻っていた。その手際の良さがかえって「マシンの欠陥やレギュレーション違反が発覚するのを怖れたのではないか」という嫌疑を招いた(事故発生後には観客席でメカニック達が部品を回収する姿が目撃されていた)。 なお事故後にダイムラー・ベンツが公式声明で「事故の原因は、ジャガーに乗るイギリス人のマイク・ホーソーンにあり、メルセデスはむしろ被害者だ」と述べたことで、イギリスでの風当たりは特に強かった。 ルヴェーのマシンが黒煙を上げながら激しく炎上し、消火作業中に再度爆発したことから、「エレクトロン製のボディが発火したのではないか」、「燃料に違法な化合物を添加していたのではないか」と噂された。ル・マンでは全車に指定燃料の使用が義務付けられており、給油作業時にはオフィシャルが成分を検査するという手続きがある。メルセデスは車検でも分からないような部品にニトロメタンを隠しておき、走行中に燃料に混入していたのではないかという説である。 メルセデス・ベンツの監督アルフレート・ノイバウアーは記者会見で実験をしてみせ、電気めっきした金属を加熱して水をかけると煙と炎がまきあがることを説明した。燃料疑惑については、フランスの捜査当局が回収した残骸の中に燃料噴射用のモーターがあり、残留燃料の検査から規定通りの成分であることが証明された。この「違法燃料説」は後々まで語られることになるが、ファンジオは「たわごとだ。あんな素晴らしい車にそんなものいらないよ」と一笑に付している。 なお、メルセデス・ベンツのノイバウアー監督と広報担当のアルトゥル・ケザーは、自主リタイア後の迅速な撤退の理由について、「苦労して開発した燃料噴射システムの秘密が(捜査の過程で外部に)知られてしまうのを避けるためだった」と率直に語っている。
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