メイラード反応とアクリルアミド
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/13 05:22 UTC 版)
「メイラード反応」の記事における「メイラード反応とアクリルアミド」の解説
メイラード反応の過程でアスパラギンとブドウ糖が反応することによって、劇物扱いのアクリルアミドが生成されることが明らかになっている。アクリルアミドは神経毒性や発癌性を持つ疑いがある化合物であるため、特にポテトチップスなどの高温加熱食品におけるメイラード反応でアクリルアミドが生じることが食品安全上の観点から問題視されている。アクリルアミドがヒトに対して神経毒として働くことはこれまで確認されているが、食品中に含まれている量ではこの作用は現れないこと、また発癌性についてはラットに薬品として直接アクリルアミドを投与する事で確認されているが、実際にヒトが食品に含まれる形で摂取した場合に発癌リスクが高くなるかどうかは明らかになっていないこと、などから、通常の摂取量であれば特別に健康上の問題に結びつく可能性は低いと、これまでは考えられていた。 2002年4月、スウェーデン食品庁は、ポテトチップスやフライドポテト、ビスケットなど、炭水化物を多く含むものを高温で加熱した食品にアクリルアミドが高濃度で含まれているという報告を出した。アクリルアミドは神経毒性や発癌性を持つ疑いがあるため、これらの食品の安全性に対する懸念が生まれることになった。その後、この報告は各国の食品関連機関の追試によって確認され、それをうけてWHOが2002年6月に専門会議を設けるなどの対応を行った。日本では食品総合研究所を中心に、この問題が検討されている。これらの食品中のアクリルアミド濃度は、飲料水中の規準値を超えていたために安全上の問題があると疑われた。 2005年には、FAOとWHOからなる合同委員会が「食品中のアクリルアミドは健康に害を与える恐れがあり、含有量を減らすべき」と勧告。 2007年、オランダのマーストリヒト大学のジャネケ・ホゲルボルスト (Janneke G. Hogervorst) らが「アクリルアミドの摂取は特に非喫煙者の女性において子宮内膜がんと卵巣がんの危険性を高める」という疫学調査結果をCancer Epidemiology Biomarkers & Prevention誌の11月号に発表。 2008年5月、オランダのマーストリヒト大学の研究チームが「アクリルアミドの摂りすぎは腎臓がんのリスクを高める」という研究をAmerican Journal of Clinical Nutrition誌5月号に発表。 安全性に関する詳細な検討は現在も継続中であり、また食品中の濃度規制に向けた取り組みも始まっている。
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