マルチビュー符号化
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/09 07:33 UTC 版)
複数の視点(マルチビュー)で撮影された映像を、それぞれのビューを独立して扱うよりも効率的に圧縮することができるマルチビュー符号化 (MVC: Multiview Video Coding) が、H.264のバージョン10で追加で規格化されている。MVCではマルチビュー映像を、1個のベースビュー (base view) と、1個以上の非ベースビュー (non-base view) として符号化する。ベースビューは既存のプロファイル(現在ではハイプロファイルのベースビューのみ定義)のストリームとして符号化され、非ベースビューはMVCで新たに拡張されたプロファイルとシンタックスを用いて、他のビューや自分自身のビューに含まれるフレームを参照(ビュー間予測: inter-view prediction)して符号化される。 ビュー間予測を用いることで、ビュー間の相関が利用可能になるほか、非ベースビューでは符号量の大きいIフレームを使用しない符号化が可能となるため、より効率的に圧縮できる。通常のH.264ストリームでは、多くのアプリケーションで必要となるランダムアクセス機能(放送チャンネル切替えやチャプタージャンプのようにストリームの途中から再生する機能)のために、適切な時間間隔でIフレームを挿入しておく必要があった。放送の場合は通常0.5秒程度である。 MVCでもベースビューではそれが当てはまるが、非ベースビューのフレームについては、ベースビューのみを参照するP/Bフレームだけで構成すれば、ベースビューがランダムアクセス可能である限り、その非ベースビューもランダムアクセス可能である。なお、そのように符号化された非ベースビューのみを参照する形で、別の非ベースビューを符号化してもやはりランダムアクセスは可能である。 MVCに対応しない従来のデコーダでもベースビューのプロファイルとレベルを満足すれば、ベースビューのみの再生は可能であり、後方互換性が維持される。非ベースビューについても、使用されている圧縮のツール(アルゴリズム)についてはビュー間予測が可能という点を除き従来のI/P/Bピクチャと同じものを使用するため、デコーダをMVC対応とするのに必要な機能拡張は少ない。ただし、複数のビューをデコードするために、必要な処理速度は単一ビューに比べ増大する。 MVCを使用した場合の圧縮の効率は、2視点のステレオ映像の場合、1視点に比べ50%程度のデータ量の増加で圧縮可能とされている。なお、50%程度という数字はBlu-ray Disc Associationが2009年12月17日に発表したものである。
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