ボーレート
【英】baud rate, baudrate
ボーレートとは、デジタルデータを1秒間に何回だけ変復調できるかを示す値のことである。単位は「baud」で、フランス人の技術者ボーの名にちなんで名づけられた。
ボーレートは、デジタルデータをアナログデータに変換し、モデムなどのアナログ回線でシリアル転送する際の単位として用いられる。ボーレートの値が大きければ大きいほど、同じ時間内により多くの情報を転送することが可能なことを意味する。位相変調方式によって一度により多くのデータを変調できる場合には、ボーレートの値も大きくなる。
データ転送に用いられる単位としては、ボーレートの他にbps(bits per second)などがある。ボーレートは1秒間に行う変復調の回数を表すものであるのに対して、bpsは1秒間に転送することのできるデータ量を示している。一般的にはbpsがデータ転送の標準的単位として用いられている。
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ボーレート
変調速度の単位で、データの伝送速度を示す。データが特定の装置から回線を通して伝送されるとき、搬送波が毎秒乗せる符号単位の数である変調速度、すなわち一秒間に処理できる最大変調回数である。信号要素がなんビットで構成されるかによって、ボーレートとデータ信号速度(ビット/秒:bps)とは異なるが、次の関係がある。C=Blog2N。C=データ通信速度(ビット/秒)、B:変調速度(ボー/秒)、N:変調レベルの数(2の整数乗)。
ボー
(ボーレート から転送)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/09/09 08:22 UTC 版)
ボー(baud) | |
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|
記号 | baud |
系 | MKS・cgs・fps 等 |
量 | 変調レート |
定義 | 1秒間あたりの信号変調の回数 |
ボー (baud、略記ではBd) は、1秒間あたりの物理信号パターンの個数を表す単位。「シンボル毎秒」(Symbol/sec)とも。また、その値をボーレート・シンボルレート・変調レートと呼ぶ。
「ボー」という用語は、フランスの電信技術者ジャン=モーリス=エミール・ボドーの姓「Baudot」に由来する[1][注釈 1] 。
概要
デジタル通信において、物理信号として一度に送信できるデータの最小量をシンボルと呼ぶ。シンボルとして使われる物理信号には、パルスの電圧や、変調した搬送波の周波数・振幅・位相などがある。ボーレートは、1秒間に何個のシンボルを通信路に送受するかをbaudの単位で示したもので、高速通信ではSI接頭語をつけてkbaud (キロボー)・Mbaud (メガボー)・Gbaud (ギガボー)などの単位も用いる。
シンボル1つで複数のビットを表現するものがある。例えば物理信号パターンとして4種類のシンボルA・B・C・Dがあれば、A:00, B:01, C:10, D:11
などのように1シンボルで2ビットが表現できる。このようにシンボルとビットは異なる量を表し、それぞれの速度であるボーレートとビットレートもまた異なる概念であるが、しばしば混同されるため注意が必要である (次節参照)。
単位の混同
baud, bps (ビット毎秒), Hz (ヘルツ)はいずれも指すものが異なる。それぞれ物理信号個数・データ量・振動数(波の上下動の回数)の1秒間における単位であるが、値が一致することがあり、混同しやすい。例えば、
- 1シンボル(1回の物理信号パターン)が1ビットのデータに対応する場合、1 baud かつ 1 bps となる。
- 1シンボル(1回の物理信号パターン)が4ビットのデータに対応する場合、1 baud かつ 4 bps となる。
- シンボルが正弦波の位相や周波数で表現される場合、1周期がそのまま1信号に対応するため、1 Hz かつ 1 baud となる。
- シンボルが一定期間の0V・1Vいずれかの電圧パルスで表現される場合、最短で2信号揃って初めて上下動1回となるため、1 Hz かつ 2 baud となる。
かつては1シンボルが1ビットとなるシステムが多かったため、baudとすべき表現をbpsと呼ぶ名残が見られることがある[2][3]。
通信の高速化に伴い、帯域幅を効率的に利用するために多くのビットを1回の物理信号として符号化することが多く、それぞれの単位において一般には比例の関係にはあるが値は一致しない。ビットレート(bps)の高い通信が、ボーレートや周波数(Hz)の低い信号で可能なとき、スペクトル効率(bps/Hz)が良いと表現する。
定式化
ボーレート QPSK 4 2
8QAM 8 3
16QAM 16 4
32QAM 32 5
64QAM 64 6 128QAM 128 7 256QAM 256 8 1024QAM 1024 10 4K-QAM 4096 12 16384QAM 16384 14 32768QAM 32768 15
これらの変調方式では、一般に帯域幅はボーレートと同じ値となる (1 Hz = 1 baud)[6]。
以下に、パソコン通信時代に広く普及した代表的なモデムを例として挙げる。
- 通信速度1200bpsのモデム(V.22)では、QPSK によって1回の変調で2ビットが処理され、600ボーで動作する。
- 通信速度9600bpsのモデム(V.32)では、16QAMによって1回の変調で4ビットを送り、2400ボーで動作する[7]。
- 通信速度14400bpsのモデム(V32.bis)では、64QAMによって1回の変調で6ビットを送り、同じく2400ボーで動作する[8]。
スペクトラム拡散通信
スペクトラム拡散通信は、GPS・CDMAの携帯電話・無線LANなどで用いる方式で、変調したQAMなどのシンボルをさらに変調している。この変調信号をチップ(chip)と呼び、その速度をチップレート(chip rate)としてチップ毎秒(chips/sec)の単位で表す[9]。
この方式では広い周波数帯にチップとして弱い信号を散りばめるため、チップの個数はシンボルの数倍~数百倍となるものがある。多くの信号をチップとして送ることで、同じ周波数帯の他の信号による電波干渉に耐えられるようになっている[10]。この結果、全体のスペクトル効率は低くなるが、多数の同時接続が可能となっている。
関連項目
脚注
- ^ “ボーレート - IT用語辞典 e-Words” (2022年11月17日). 2023年11月22日閲覧。
- ^ “Review: Intelligent Multiport Serial Boards; "Baud vs. bps"”. Linux Journal (1995年6月1日). 2023年11月22日閲覧。
- ^ David S.Lawyer (原著) (2000-1-4). 『The Linux Modem-HOWTO』 v0.08. Linux Japanese FAQ Project日本語訳 . "20.付録B:``ボー と ``bps"
- ^ D. A. Bell (1962). Information Theory; and its Engineering Applications (3rd ed.). New York: Pitman
- ^ “Nyquist theorem”. TechTarget: WhatIs.com (2022年5月). 2023年11月19日閲覧。
- ^ Andrea Goldsmith (Standford University) (2020-3-3). Wireless Communications. 5.3 Amplitude and Phase Modulation (p.157)
- ^ “16QAM”. 通信用語の基礎知識 (2007年3月11日). 2009年2月27日閲覧。
- ^ “64QAM”. 通信用語の基礎知識 (2007年3月11日). 2009年2月27日閲覧。
- ^ 入門書 WiFi:802.11の物理層とトランスミッタ測定. テクトロニクス. (2013-12)
- ^ “電波で情報を送れる仕組み 2 - 塩田紳二のモバイル基礎講座 第6回”. ITmedia ビジネスオンライン (2005年6月15日). 2023年11月22日閲覧。
注釈
外部リンク
- ブロードバンドへの道 - 高島平パソコン倶楽部
- lAMNOTGOOMBA『ALL Old Modem Sounds (300 baud to 56K)』- Bell 103, V.22(bis), V.32(bis), V.34, V.90, and V.92), corresponding to 300 bps, 2400 bps, 14.4K, 33.6K, and 56K. (2016/11/06)
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