ホーヘンベルク・コーンの定理
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/02/25 05:02 UTC 版)
「密度汎関数理論」の記事における「ホーヘンベルク・コーンの定理」の解説
電子密度を用いた物理量の計算が原理的に可能であることは1964年にヴァルター・コーンとピエール・ホーエンバーグによって示された。 ある外部ポテンシャルのもとにあるN個の電子系を考える(例えば分子の原子核の配置が決まれば、それらの原子核が電子に及ぼす静電ポテンシャルは決まる)。いま、この系の基底状態の電子密度ρだけがわかっているとする。ホーヘンベルク・コーンの第1定理によれば、ある系の基底状態の電子密度ρが決まると、それを基底状態にもつ外部ポテンシャルがもし存在すれば(v-表示可能性の仮定)それはただ1通りに定まる。また電子数Nも電子密度を全空間に渡って積分することで求めることができる。その外部ポテンシャルと電子数から導かれるハミルトニアンHのシュレーディンガー方程式を解けば、その外部ポテンシャルのもとで許される電子系の波動関数Ψがわかるので、あらゆる物理量をそこから求めることができる。つまり、基底状態の電子密度から、系の(励起状態に関わる量も含めて)あらゆる物理量は原理的には計算できることになる。物理量を電子密度から計算する方法を密度汎関数法というが、この定理はそれを正当化するものである。3次元空間内のN電子系の波動関数は各電子について3個、合計3N個の座標変数に依存する関数となる。一方、電子密度は電子が何個になろうとも3個の座標変数に依存するだけであり、取り扱い易さに雲泥の差がある。 また、ホーヘンベルク・コーンの第2定理によれば、外部ポテンシャルをパラメータにもつ電子密度の汎関数 E H K {\displaystyle E_{\rm {HK}}} (ホーヘンベルク・コーンのエネルギー汎関数)が存在して、この汎関数は与えられた外部ポテンシャルのもとでの基底状態の電子密度 ρ 0 {\displaystyle \rho _{0}} で最小値を持ち、基底状態のエネルギーを与える。つまり E H K {\displaystyle E_{\rm {HK}}} の定義域の ρ {\displaystyle \rho } に対して E H K [ ρ ] ≥ E H K [ ρ 0 ] {\displaystyle E_{\rm {HK}}[\rho ]\geq E_{\rm {HK}}[\rho _{0}]} がなりたつ。よって電子密度関数を変化させて最小のエネルギーを与える電子密度を探索すれば基底状態の電子密度を求めることができる。 ただし、ホーヘンベルク・コーンの第1定理の仮定である密度のv-表示可能性の必要十分条件は知られていない。レヴィの制限付き探索法はHK定理を単純化し、このv-表示可能性問題を解決した。そのため、現在ではHK定理はレヴィの探索と比較してあまり重要な意味を持たない。
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