ホルミシスが生じる線量範囲
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/05/19 21:15 UTC 版)
「放射線ホルミシス」の記事における「ホルミシスが生じる線量範囲」の解説
トーマス・D・ラッキーは自然放射線レベルから年間10 Gyの間の全身照射であればホルミシスは生じるとし、被曝線量の許容値としては保守的な値として年間1 Gyを主張している。電中研の服部禎男は、「自然放射線の100倍を自由に被ばくできる健康センター施設を全国につくりたい」とし、そのためにはリミットをトーマス・ラッキーの示した年間1 Gyが適当であるとし、放射線量率が毎時100 mSvあるいは毎時1 Sv以下では癌にならないとの学者の研究発表があると主張している。2003年に米国DOEの低線量放射線研究プログラムによる支援等を受けて、PNASに発表された論文によれば、人の癌リスクの増加の十分な証拠が存在するエックス線やガンマ線の最低線量は、疫学データに基づくと、瞬間的な被曝では、10-50 mSv、長期被曝では50-100 mSvであることが示唆されている。さらに低線量における癌リスクを推定する最適な方法は、中間から極低線量まで線形外挿が最適な方法のようであるとしている。瞬間的な被曝の研究として原爆の被曝影響における調査では、5-125 mSv(平均34 mSv)で固形癌死亡率の有意な増加、5-100 mSv(平均29 mSv)で癌罹患率の有意な増加を示している。 また、同論文では「いくつかの動物実験は、低レベルおよび中レベルの放射線被ばく量が寿命を向上させ得ることを示唆するが、すなわち潜在的なホルミシス反応を示唆する。低線量被ばくのケースにおいてしばしばあることだが、当該データはいくつもの意味に取れる曖昧なものである。すなわち、たとえば、Maisinらは500 mGyのX線急性被ばく後に138匹のC57BLマウスが比較群よりも平均50日長生きしたことを報告する。対照的に、Storerらは同じ被ばくを受けた1390匹のRFMマウスが平均で75日短命であったことを報告している」と述べている。 財団法人環境科学技術研究所ではマウスを使った寿命試験を行い、低線量率の放射線でも連続照射によって高線量を照射すると白血病を誘発する作用を持つことが明らかになった、と報告している。なお、ここでいう低線量率とは1日20 mGyである。 財団法人放射線影響協会「原子力発電施設等 放射線業務従事者等に係る疫学的調査 平成17年度~平成21年度(第IV調査)」では、放射線業務従事者(平均被曝線量は累積で13.3 mSv)の白血病を除く全悪性新生物のSMR(標準化死亡比 95%信頼区間) は1.04(1.01-1.07)で、全日本人男性死亡率(20歳以上85歳未満)に比べ有意に高かった。生活習慣等による影響の可能性を否定できないものの、肝臓、肺の悪性新生物のSMRが有意に高いことが寄与しているものと考えられるとしている。
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