ヘイトクライム関連法の問題点
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/26 08:51 UTC 版)
「ヘイトクライム」の記事における「ヘイトクライム関連法の問題点」の解説
アメリカ合衆国では、「ヘイトクライム判決強化法(1994年)」が制定されているが、その制定過程の議論において、また運用後において問題点が指摘されている。 特定の行為を「ヘイトクライム」と定義することで、むしろ偏見が助長されるとみる識者も少なくない。ヘイトクライム法案成立運動を「特定グループが自分のグループを利するための運動」、「特定グループを優遇するのは逆差別」と指摘されることがある。 また、同じ窃盗罪でもヘイトクライムなら重刑になるというのは、刑法上のアファーマティブ・アクションになるという見方からアメリカ合衆国憲法修正第14条に含まれる平等保護の条項との関連を指摘する法学者も少なくない。 1990年代の米国ニューヨーク市でおこった韓国系アメリカ人と黒人、黒人とユダヤ人との摩擦や暴動の事例では、ヘイトクライム厳罰法支持を訴えて市長に当選したディンキンズ(初のニューヨーク黒人市長であった)にとって試練となった。「相手が起こした事件はヘイトクライムであるのでヘイトクライム法に基づいて厳罰に処すべき」だと訴える声が後を絶たなくなり、実際は事実関係さえ整理できない「ののしり合い」や「いさかい」といった類のものが大半であった。結局この問題は1993年選挙の敗因の一つとなり、「ヘイトクライムに対するゼロ・トレランス(容赦なし)」の姿勢で挑んだディンキンズではなく、鬼の元連邦検事として立候補したジュリアーニの打ち出した、犯罪に対して徹底的に挑む「アンチ・クライム」というスタンスがニューヨーク市民に有効に働いたとされる。 内野正幸はドイツやフランスのヘイトクライム立法に対し「本来自由であるべきだと思われるような表現行為に対してまで、適用される傾向」があると指摘している。 憲法学者の長谷部恭男は、表現内容に基づくヘイトスピーチ規制には慎重に慎重を重ねる必要があるが、ヘイトクライムを重く処罰することは憲法学から見ても問題は少ないとした。
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