パツリンとは? わかりやすく解説

パツリン

分子式C7H6O4
その他の名称パツリン、クラバシン、クラバチン、ペニシジン、エクスパンシン、クラビホルミン、ミコインC3Patulin、Clavacin、Clavatin、Expansine、Penicidin、Mycoin C3、Claviformin、4-Hydroxy-4H-furo[3,2-c]pyran-2(6H)-one、4-Hydroxy-2,6-dihydro-4H-furo[3,2-c]pyran-2-one、Sch-351633
体系名:4-ヒドロキシ-4H-フロ[3,2-c]ピラン-2(6H)-オン、4-ヒドロキシ-2,6-ジヒドロ-4H-フロ[3,2-c]ピラン-2-オン


パツリン

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/22 02:32 UTC 版)

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パツリン[1]
識別情報
CAS登録番号 149-29-1
PubChem 4696
EC番号 205-735-2
KEGG C16748 
特性
化学式 C7H6O4
モル質量 154.12 g/mol
融点

110 °C, 383 K, 230 °F

への溶解度 可溶
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。

パツリン (patulin) は、ペニシリウム属(アオカビ類) Penicillium expansumアスペルギウス属(コウジカビ類)によって作られる、マイコトキシン(かび毒)の一種。

特長

不飽和5員環ラクトンを含む2環構造のカビ毒。極大吸収波長276 nmの紫外線吸収性があることから、その性質を利用した検出が行われる[2]。菌が付着して腐敗したリンゴブドウモモ等から検出される。特にリンゴ製品のパツリンの量は製品の品質の基準として用いられる。

カルシウム塩は Penicillium expansum の増殖抑制効果があることが報告されている[3]

パツリンは他のマイコトキシンと比較すると強力な毒物質ではないが、細胞膜に対する膜透過性を阻害する特性[4]を持ち、臓器出血性のほかいくつかの研究で遺伝毒性を持つことが示され、動物実験を通して発癌性の可能性が示唆されている[5]

パツリン産生の影響因子

りんご品種により産生量が異なり「ジョナゴールド」が「ふじ」よりも多かったとする報告がある[6]。なお、全ポリフェノール量とリンゴ酸量はパツリン産生と負の相関関係があり、産生に影響を及ぼす果実成分は、果物特有の香気成分を構成するエチルエステル化合物の酪酸メチル類などで濃度依存的な促進効果がみられたと報告されている[7] [8]

分解

アルコール発酵により分解する。また、条件によっては、アスコルビン酸はパツリンを消失させる。従って、オレンジなど柑橘類でのパツリン汚染は発生しない。150℃の高温処理では20%の減少と、亜硫酸塩の添加及び活性炭処理によって減少することが報告されている。

産生菌

  • ペニシリウム属(アオカビ類)Penicillium expansum など

毒性

マウス経口評価では、

  • 急性: LD50 17mg/kg 消化管の充血、出血、潰瘍等
  • 短期: 摂餌量及び体重増加量の抑制、腎機能障害、十二指腸の充血
  • 長期: 体重増加抑制

代謝

赤血球及び肝臓脾臓腎臓に分布するが、ほぼ24時間以内に排出される。

基準

いくつかの国ではリンゴ製品に対しパツリン規制を設けていて、世界保健機関(WHO)ではリンゴジュース中のパツリンの最大濃度は50 µg/Lを推奨している[9]

日本国内の汚染状況

福岡市保健環境研究所保健科学部門報告による、市販リンゴ果汁(100%果汁)の汚染調査によれば、16検体の試料のうちストレート果汁(6検体)からは不検出で、濃縮還元の10検体からは基準値の0.050ppm以内のパツリンを検出している[10]

中毒事例

日本では、1964年神戸で汚染された飼料が原因となった乳牛の集団中毒が発生している[11]

出典

脚注

[脚注の使い方]
  1. ^ Merck Index, 11th Edition, 7002.
  2. ^ カビ毒の分析法 日本分析化学会 (PDF)
  3. ^ Effects of Ca2+ and Mg2+ on Botrytis cinerea and Penicillium expansum in vitro and on the biocontrol activity of Candida oleophila
  4. ^ マイコトキシン研究の現状 東京女子医科大学雑誌 53巻6号 p.533-555 1983/6/25
  5. ^ “Patulin: a Mycotoxin in Apples”. Perishables Handling Quarterly (91): 5. (August 1997). http://ucce.ucdavis.edu/files/datastore/234-166.pdf. 
  6. ^ 渡辺満, 鮎瀬淳「日本の主要リンゴ品種における Penicillium expansum のマイコトキシン産生とパツリン産生に及ぼす果実成分の影響」『日本食品科学工学会誌』第56巻第4号、日本食品科学工学会、2009年4月、 215-222頁、 doi:10.3136/nskkk.56.215ISSN 1341027XNAID 10024855309
  7. ^ 田口智康, 石原亨, 中島廣光、【原著論文】リンゴ果汁に含まれる揮発性化合物による Penicillium expansum の生育およびパツリン産生への影響 『マイコトキシン』 2014年 64巻 1号 p.1-14
  8. ^ Tomoyasu Taguchi,Atsushi Ishihara,Hiromitsu Nakajima:【article】Effects of volatile compounds produced by plants on fungal growth and the production of mycotoxins 『マイコトキシン』 2015年 65巻 2号 p.131-142, doi:10.2520/myco.65.131
  9. ^ Foodborne hazards (World Health Organization”. 2007年1月22日閲覧。
  10. ^ LC/MS/MS によるりんごジュース中のパツリンの残留分析 福岡市保健環境研究所保健科学部門
  11. ^ サイレージの品質管理 3) 好気的変敗の抑制 農林水産省 農林水産技術会議事務局筑波事務所

外部リンク


パツリン

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/02/02 20:53 UTC 版)

マイコトキシン」の記事における「パツリン」の解説

ペニシリウム属(アオカビ類)、アスペルギルス属コウジカビ類)によって産生される。腐ったリンゴモモブドウなど果実表面につき、果汁などを汚染する消化管の充血出血潰瘍等(動物実験)を引き起こす発癌性疑われている。

※この「パツリン」の解説は、「マイコトキシン」の解説の一部です。
「パツリン」を含む「マイコトキシン」の記事については、「マイコトキシン」の概要を参照ください。

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