ハミルトンの法則
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/08 07:32 UTC 版)
「ウィリアム・ドナルド・ハミルトン」の記事における「ハミルトンの法則」の解説
詳細は「血縁選択説」を参照 ハチやアリなど社会性昆虫の行動は、ダーウィンが、生き延びる女王を通して進化するのだろうと予測していた。しかし子を残さずに形質が子孫に受け継がれると説明するのは自然選択に明確に反すると考えられ、場当たり的な説明だと批判されていた。ホールデンやフィッシャーはこれの定式化に取り組んだが成功しなかった。ハミルトンはシューワル・ライトの血縁係数を用いることでこの問題を解決した。 C < R × B {\displaystyle C<R\times B} Cは利他行動の行為者のコスト(通常は適応度で計られる)、Rは血縁係数、Bは受益者の利益である。「利他行動のコストが、利益と受益者の血縁係数の積を下回るとき、利他行動は進化する」がハミルトンの法則である。ただしこの法則が厳密に成り立っているかはまだ立証されていない。これに行為者自身の適応度を加えたものが包括適応度と呼ばれる。 半倍数性の昆虫(たとえばミツバチ、スズメバチ)の場合、メスである働きバチは自分で血縁係数が0.5となる子を作るよりも、女王に血縁係数が0.75となる妹を作らせた方が、同じように世話をする場合に得られる遺伝的利益が大きい。これを3/4仮説という。また膜翅目のワーカー個体の存在から、無性的に増殖するアブラムシでも(単為生殖を行えば親子間の血縁度は1.0なので)同じような非繁殖カーストが見つかるだろうと予測したが、1977年に青木重幸によってボタンヅルワタムシの兵士カーストが発見された。 ハミルトンは後に血縁係数をジョージ・プライスの公式によって定義し直した。血縁係数は「個体群中のランダムに選んだ二個体が遺伝子を共有する確率よりも、利他行動の行為者と受益者が同じ遺伝子を共有する確率のほうがどれだけ高いと期待できるかをあらわす値」となった。血縁関係は包括適応度を高める相手を識別するためには重要であるが、利他行動の進化のために必要なものではなくなった。彼の1964年の論文は難解であったために査読者に理解できず、最後にメイナード=スミスが担当した。メイナード=スミスは重要性に気づいたが、この論文が誰にも読まれないだろうと考え、二編に分割するよう要求した。ハミルトンが書き直している間にメイナード=スミスがネイチャーで言及したため、ハミルトンは手柄を横取りされたと不満を抱くことになった。
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