ノースウエスト準州とユーコン準州
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/02/14 17:09 UTC 版)
「イヌクティトゥット語」の記事における「ノースウエスト準州とユーコン準州」の解説
カナダ・ノースウエスト準州のイヌイットは、自分たちを イヌヴィアルイトと呼ぶ。ほとんどはイヌヴィアルイト居留地域で暮らすが、マッケンジー川北部の一部、ノースウェスト準州とユーコン準州の北極海沿い、バンクス島、ヴィクトリア島の一部にも住んでいる。また、北極海の遠い島々にも不規則に住んでいる。 ノースウェスト準州のイヌイット諸語の派生語は、しばしばイヌヴィアルイト族の話すイヌヴィアルクトゥン語(英語版)(イヌヴィアルイト語) としてイヌクティトゥット語と共に扱われるが、それは不適切で誤解を招く。イヌヴィアルイト族の話す派生語は次の3つの個別の方言を包含する。 Kangiryuamiutun 主にホールマンのコミュニティーで話されている。この方言はヌナブト準州西部のイヌイナクトゥン語(イヌイナク語)と、本質的には同一である。 シグリトゥン 主に、ポーラツク、サックスハーバー、ツクトヤクツクのシグリトの人々のコミュニティーで話される。この方言は、マッケンジー川デルタ地帯とその周辺の沿岸地域、北極海の島嶼では主要な方言であったが、19世紀に発生した大規模な疫病の流行によって話者が劇的に減り、長い間、この方言は死語になったと信じられていた。地域外の人は1980年代になってようやく、この方言がまだ話されていることを認識した。 ウーマミウトゥン ウーマミウトと呼ばれる人々が暮らすイヌヴィクとアクラヴィク(en)のコミュニティーで話されている。基本的にはアラスカ・イヌピアトゥン方言と同一でカナダ側のイヌピアック語(Canadian Iñupiaq)とも捉えられるが、アラスカ購入によりマッケンジー川デルタ地域がカナダ側に分離されたため、現在ではカナダのイヌイット方言扱いとなっている。ウーマミウトの人々はかつての居住地シグリト地方で流行した前述の19世紀の疫病を恐れ、国境を越える再移住を放棄した。 これらイヌビアルクトゥン方言は絶滅の危機にあり、近年、英語がコミュニティーの共通言語となっている。ノースウエスト準州におけるイヌクティトゥット語使用状況の調査は様々だが、いずれも使用状況に勢いがないという点で一致している。Inuvialuit Cultural Resource Centre によれば、4,000人のイヌヴィアルイト話者のうち10%はイヌクティトゥット語のどんな語形も話し、4%が家の外ではイヌヴィアルイト語を話さないという。2001年に行われたカナダ国勢調査報告は、わずかだが良い結果を示している。イヌヴィアルイト族であると自己申告した3,905人のうち、765人が自分はイヌヴィアルイト方言話者であると申し出ている。 しかし、この地方での非イヌイット居住者の多さとイヌヴィアルイト方言話者の減少、共通方言の不足を考慮すると、ノースウエスト準州におけるイヌイット諸語の将来像は暗く見える。
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