ドーナツ化現象と郊外化
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/19 19:00 UTC 版)
こうして、自営業者、工場労働者などを残し、大都市からは多くの住民が鉄道沿線の郊外へと脱出した。全国の都市で、都心部や隣接する住宅地は1970年代から1980年代に地価高騰や地上げなどにより急激にビジネス街に変わり、古くからの住民の少なからぬ部分は郊外へ移転しドーナツ化現象が発生した。特に、中心都市である大阪市域に郊外住宅地を含まない大阪都市圏では、デトロイトやフィラデルフィアなどアメリカの大都市圏の多くと同じように、都心はビジネス街になり、大阪市域内の住宅地からは富裕層・アッパーミドルの多くが郊外へ去り、後に重工業が低迷した際に中心都市の貧困化が深刻になる伏線となった。また、三大都市圏においては国鉄→JR各社のフレックス導入により新幹線を利用した通勤が容易になったほか、並行する在来線近郊電車の運転本数や車両の充実化などにより、都心から100km圏の鉄道沿線も通勤圏に取り込むこととなった。 1980年代後半から1990年代以降、地方の都市でも、内需拡大のためやバブル崩壊後の公共投資促進のための道路整備の進展や、自治体庁舎・企業・工場などの広い郊外への移転によって、住民も老朽化した都市を脱出し郊外の分譲地に移転した。交通の中心は完全に自動車に変わり、行政や企業活動・商業地・繁華街もバイパス沿いに展開し、駐車場や広い道路のない旧来の中心市街地は人口的にも商工業活動の上でも劣勢になり、空洞化した。 上記のように郊外化の進展した当時、仙台・水戸・宇都宮・千葉・福岡などのバスを中心とした公共交通網を持つ都市やその周辺においては、多くの路線系統が集中する始終点あるいは主要経由地であるバスターミナルやバス営業所を郊外に新設あるいは移転し、そこを中心に住宅地分譲などが行われるケースも見られ、現在においても郊外に新しいニュータウンが造成された場合、ニュータウン行きの新路線を設定したり、近辺を通る既存のバス路線をニュータウン経由にするといったケースがよく見られる。
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