リスト:「ドン・ジョヴァンニ」の回想(モーツァルト)
英語表記/番号 | 出版情報 | |
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リスト:「ドン・ジョヴァンニ」の回想(モーツァルト) | Réminiscences de 'Don Juan' S.418 R.228 | 作曲年: 1841年 |
作品解説
リスト : 「ドン・ジョヴァンニ」の回想 / Reminiscences de 'Don Juan' S.418
モーツァルトの傑作オペラ《ドン・ジョヴァンニ》の主題による編曲作品。1841年、リストが30歳のときに作曲し、デンマークの王、クリスチャン8世に献呈された。大きくは三つの部分からなり、騎士長のテーマ、ドン・ジョヴァンニとツェルリーナの二重奏『お手をどうぞ』、騎士長のテーマと、ドン・ジョヴァンニのアリア『シャンパンの歌』が絡み合った部分にわけられる。
この曲の場合、原曲をすべて忠実に再現したというよりは、旋律を引用しながら、それらがリストによって再構築された形になっている。
跳躍し、連続するオクターブ、めまぐるしく動き回る音階、圧倒的な音響など、難曲中の難曲ともいえるヴィルティオーゾ作品である。たたみかけるように繰り広げられる名人芸は、まさに見物である。また、リストによって1877年に二台のピアノ用の編曲もなされており、華やかな演奏効果をあげている。
第1部分:冒頭、ドン・ジョバンニによって殺された騎士長の、呪いのテーマが重々しく鳴り響く。おどろおどろしく上下に激しくはしりまわる音階は、騎士長の復讐を暗示する。
第2部分:第一部分とは一変して、明るい雰囲気をもつ。ドン・ジョバンニとツェルリーナの二重奏『お手をどうぞ』が甘くたっぷりと歌われる。ほぼ忠実な形で再現される。そしてこの主題は、さらに華麗な装飾をみせながら変奏、展開される。
第3部分:ふたたび騎士長の呪いのメロディがきかれる。場面はドン・ジョバンニは、騎士長の亡霊を晩餐に招待するシーン。騎士長の不気味なテーマとの絡みを効果的にみせながら、ドン・ジョバンニの『シャンパンの歌』で息をつく間もないほど圧倒的なフィナーレを形成する。
「ドン・ジョヴァンニ」の回想
(ドン・ジョヴァンニの回想 から転送)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/24 07:45 UTC 版)
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「ドン・ジョヴァンニ」の回想(Réminiscences de Don Juan, サール番号:S.418)は、フランツ・リストが作曲(編曲)したピアノ曲。ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトの歌劇『ドン・ジョヴァンニ』からいくつかの旋律を抜き出し、再構成したパラフレーズ作品である。
概要
1841年に作曲され、1843年に出版、デンマーク王クリスチャン8世に献呈された。
リストのオペラ・パラフレーズの代表作として古くから知られる一方、難曲としても知られており、フェルッチョ・ブゾーニは「ピアニズムの頂点をなすものとして、象徴的な意味を持つ」、ゲンリフ・ネイガウスは「正確に弾きこなすことができるのは、ギンスブルクを除けばピアノラのみだろう」と述べている。また、アレクサンドル・スクリャービンは本曲と《イスラメイ》を練習中に右手を故障している。
リスト自身によって、1877年に二台ピアノ用編曲(S.656)が作られている。またブゾーニが1918年に校訂した版には、経過的なパッセージのカットを含む大小の変更が記されており、これが「ブゾーニ版」として演奏される場合もある。
リストは1842年から43年にかけて『フィガロの結婚』と『ドン・ジョヴァンニ』の主題による《フィガロとドン・ジョヴァンニの主題による幻想曲》S.697の作曲を試みたが未完に終わった。ブゾーニとレスリー・ハワードが補筆・校訂している。ブゾーニ版では『ドン・ジョヴァンニ』の主題がカットされ、大幅に短縮されている。
楽曲構成
グラーヴェ、ニ短調、4/4拍子。オペラの第二幕、墓地にて騎士長がドン・ジョヴァンニに警告する場面の音楽("Di rider finirai pria dell'aurora")から始まる。続いてオペラの終盤、騎士長が食事の席に現れる場面の音楽("non si pasce di cibo mortale")が用いられ、重苦しい雰囲気で音楽は進んでいく。この場面では半音階の急速なパッセージが吹き荒れ、騎士長の復讐心を暗示する。
アンダンティーノ、イ長調、2/4拍子となると、オペラ第一幕の二重唱「お手をどうぞ」("Là ci darem la mano")が穏やかに現れる。カデンツァをはさみつつ、この主題による二つの変奏が続く。第1変奏は6連符を中心に扱い、様々な技巧が披歴される。第2変奏は対位法的な処理から始まるが、騎士長の音楽がふたたび現れる("Tu m'invitasti a cena")と半音階のパッセージが支配するようになり、主題は展開風に扱われる。
主題を予示する間奏を挟んで、プレスト、変ロ長調で第一幕のドン・ジョヴァンニのアリア「シャンパンの歌」("Fin ch'han dal vino")が軽快に現れる。この主題は3回繰り返され、次第に華やかに奏されるようになる。そのまま華麗なコーダに至るが、終結の直前に騎士長の音楽が変ホ短調で三たび現れ、オペラの結末を暗示する(前述のブゾーニ版ではこの部分は省かれている)。
要求される演奏技巧は幅広い跳躍、オクターヴの連続、急速な三度重音、アルペジオやスケールなど多岐にわたる。
参考文献
Leslie Howard "The complete music for solo piano, Vol. 6 – Liszt at the Opera I" (Hyperion, CDA66371/2) のCD解説 (Leslie Howard, 1990)
外部リンク
- Réminiscences de Don Juan, S.418の楽譜 - 国際楽譜ライブラリープロジェクト
- リスト : 「ドン・ジョヴァンニ」の回想(モーツァルト) - ピティナ・ピアノ曲事典
- ドン・ジョヴァンニの回想のページへのリンク