ツヴィの躁うつ病と改宗
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/07/03 00:49 UTC 版)
「シャブタイ派」の記事における「ツヴィの躁うつ病と改宗」の解説
預言者とされたナタンは、カリスマ性溢れる指導者であると同時に優れた修辞学者でもあった。ツヴィの特徴としてしばしば見られた起伏の激しい精神状態の変化は、現在では双極性障害が原因だと考えられているのだが、ナタンの見解によれば、ツヴィの精神世界のなかで繰り広げられていたケリフォトとの間の霊的な闘争が原因とされていた。 ツヴィのイスラム教への改宗をきっかけにナタンは自身の思想を結晶化させたのだが、そこでは自らを貶め、恥辱に染まったツヴィに備わる救世主としての資質にもっとも焦点が当てられている。つまり、一見したところ失墜したかに見えるツヴィの行動は、実は天上界における秘奥義に他ならず、法秩序との間における闘争が最終段階に突入したことを意味していると考えた。また、ナタンは様式化された伝統的な救世主像にも言及し、それを不浄、劣悪、無価値と評して斬り捨てつつ、自らが提示する神話的英雄像に多義性を持たせている。 シャブタイ派の信奉者の間では、ツヴィが弟子のイスラム化を推奨しているのか否かについての疑問が噴出し、飽くなき議論が繰り返された。ナタンは、ツヴィから直々に改宗を命じられた者だけが、イスラム化を通じて世界を修復する義務があると主張した。また、ツヴィとの面会時において彼が精神的に高揚しているようであれば、すぐさま引き返すよう弟子に指示を出している。これは、ツヴィが躁状態になると、すべてのユダヤ人のイスラム教への改宗を熱望するようになるからである。アブラハム・ミグエル・カルドソは、改宗という手段による世界修復は信奉者それぞれに割り当てられた義務ではなく、救世主のみが果たすべき義務であると主張した。また、改宗後のツヴィの行動がケリフォトに対して段階的に影響を及ぼしていると述べている。急進的なグループともなると、シャブタイ派信奉者のすべてがユダヤ教を破棄した暁にこそ救済が訪れると考え、こぞってイスラム教やキリスト教に改宗してしまった。
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