セイバーメトリクスに基づく起用法
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/26 22:25 UTC 版)
「打順」の記事における「セイバーメトリクスに基づく起用法」の解説
キャンパニスの定義はMLB全体に大きな影響を与え、加えて通算本塁打上位5人が3番打者としての出場がもっとも多いという記録が残っていることなどや、一番から始まる攻撃で確実に打順が回ること、四番より前位でありその分打席数が多くなることなどから、2000年代中頃までは三番に最強打者が置かれることが多かった。これは、日本では「三番最強打者論」として一部のチームで採用されるなど影響を与えている。 ところが、2010年代に入ると、セイバーメトリクスによる高度な分析が進み、統計的に最適な打順を研究する学者も数多く存在する中で、コンピュータ・シミュレーションなどによって「より優れた打者により多くの打席数を与える」という起用法が効果的な戦術として示され、それに基づいた「二番最強打者論」がMLB各チームに影響を与えるようになった。また、トム・タンゴらは『The Book: Playing the Percentages in Baseball』(2007年)にて、数理モデルを用いて「各打順に認められる一般的な性質」や各打順の「強打者を置く値打ち」などの分析結果を示し「二番最強打者論」を裏付けている。タンゴらによれば、 打順の中で最も重要であるのは一番・二番・四番であり、チーム内で最も優れた3人を起用すべき。その中でも出塁率の高い打者を一番・二番、長打力が高い打者を四番に起用する。 次に重要なのは三番・五番であり、一番・二番・四番に次ぐ2人を起用する。二番と三番は現実の試合では逆転している場合が多いが、三番は二番に比べて二死の場面で打席に立つことが多いことを踏まえるとこれは誤りとなる。 重要でないのは六番から九番までの下位打線である。五番までの上位打線に比べ重要度は下がるので、打力の落ちる4人を打力が高い順に配置すればよい。 と分類することができる。このように「最も重要」とされることに加え、併殺を避けるための走力や打点をあげる/得点機を演出する打力などが必要となる一番打者が出塁している場合の打撃、自ら出塁して得点機を創出する能力など求められるものが多いことから、二番に最も優れた打者を起用することが理想的とされるのである。 「二番最強打者論」が優位となった背景としては、MLBにおいて、チームの各打者が一様に一定の長打力を有すようになったことで、機動力や走力を利用する戦術から長打力と出塁能力を重視し大量得点を狙う戦術へと傾向が変容し、元来存在した「打者のタイプ」という概念が意味をなさなくなっていることや、初回をビッグイニングにして試合の主導権を握ることを目指す戦い方が主流になっていることなどが挙げられる。その上で、データを用いるなどして「より効率的に得点できる打順」を模索した結果、上記のように「二番に最も優れた打者を置く」という結論にたどり着くのである。 日本でも、これに影響を受けて2015年頃より東京ヤクルトスワローズや東北楽天ゴールデンイーグルスなど一部のチームで二番に強打者を起用するという動きも見られるものの、長期に渡って安定的に成績を残したり、圧倒的優位性を示したりという例は未だなく、定着するには至っていない。これについては、MLBのように多くの打者が長打力を有している訳ではない上に、歴史的に機動力やバントなどの小技を駆使する戦術が定着している日本においては、単に「MLBの真似」をしているだけの状態ではこれを定着させるのは困難であるとの指摘がある。ただしその反面、「二番最強打者論」を採用することによって従来の日本式の戦術でしばしば見られる「自ら相手にアウトを与える」行為による得点機会の浪費を抑えることができるとの見方もある。
※この「セイバーメトリクスに基づく起用法」の解説は、「打順」の解説の一部です。
「セイバーメトリクスに基づく起用法」を含む「打順」の記事については、「打順」の概要を参照ください。
- セイバーメトリクスに基づく起用法のページへのリンク