菱亜鉛鉱
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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/05/01 14:01 UTC 版)
菱亜鉛鉱 | |
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分類 | 炭酸塩鉱物 |
シュツルンツ分類 | 5.AB.05 |
Dana Classification | 14.1.1.6 |
化学式 | ZnCO3 |
結晶系 | 三方晶系 |
対称 | 3 2/m |
単位格子 |
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モル質量 | 125.40 gm |
晶癖 | 結晶状は珍しく、一般的にぶどう状、腎臓形、球晶状、鍾乳石状 |
双晶 | 存在しない |
へき開 | 完全 |
断口 | 不規則、貝殻状 |
粘靱性 | 小さい |
モース硬度 | 4.5 |
光沢 | ガラス光沢、まれに真珠光沢 |
色 | |
条痕 | 白色 |
透明度 | Translucent |
比重 | 4.4 - 4.5 |
光学性 | 一軸性負 |
屈折率 |
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複屈折 | δ = 0.223 - 0.227 |
蛍光 | 紫外線下で蛍光のパールグリーンか、パールブルー |
文献 | [1][2][3] |
プロジェクト:鉱物/Portal:地球科学 |
菱亜鉛鉱(りょうあえんこう、英: smithsonite[4]、スミソナイト)は、鉱物(炭酸塩鉱物)の一種。化学組成は ZnCO3(炭酸亜鉛)、結晶系は三方晶系。方解石グループの鉱物。
smithsonite の名前は、1832年に鉱物学者の François Sulpice Beudant によって、菱亜鉛鉱を最初に見分けたジェームズ・スミソンにちなんで命名された[2]。
産出地
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亜鉛が埋蔵され、風化や酸化還元反応が行われる地域で二次鉱物として産出する。また、まれに亜鉛を含んだ炭酸塩岩の中でも産出する。
一般的に、異極鉱、珪亜鉛鉱、水亜鉛土、白鉛鉱、孔雀石、藍銅鉱、水亜鉛銅鉱、硫酸鉛鉱などとともに産出する[3]。
どこか特定の地域に偏在しているわけではなく、世界各地で産出される。後述の通り、色にバリエーションがある鉱物であるが、産地によって鉱物の色が異なる。[5]
例えば、以下の国で産出される。
アメリカ合衆国、メキシコ、イタリア、オーストリア、ドイツ、ベルギー、フランス、スペイン、イギリス、アルジェリア、チュニジア、ナミビア、オーストラリア、中国、日本。[5]
日本の菱亜鉛鉱の産地
日本では以下の43か所で産出される[6]。
産地 | 別名 | 県 | 発見年 | 備考 |
---|---|---|---|---|
神岡鉱山 | 岐阜 | 1885年 | 閉山・日本の地質百選 | |
茂住鉱山 | 神岡鉱山 | 岐阜 | 1886年 | 閉山 |
細倉鉱山 | 高田鉱山 | 宮城 | 1897年 | 閉山・近代化産業遺産群33 |
倉谷鉱山 | 石川 | 1899年 | 閉山 | |
荒川鉱山 | 秋田 | 1908年 | 閉山 | |
日三市鉱山[7] | 秋田 | 1908年 | 閉山 | |
日影鉱山 | 鹿児島 | 1908年 | 大谷鉱山と合併 | |
亀ヶ谷鉱山[8] | 笹尾鉱山 | 富山 | 1908年 | 閉山 |
練股鉱山 | 福井 | 1908年 | ||
長登鉱山 | 山口 | 1913年 | 閉山 | |
葡萄鉱山 | 朝日鉱山 | 新潟 | 1930年 | |
大和鉱山 | 於福鉱山 | 山口 | 1932年 | |
院内鉱山 | 秋田 | 1932年 | ||
魚見鉱山 | 福井 | 1933年 | ||
坂東島鉱山 | 福井 | 1933年 | ||
花ノ山鉱山 | 大田鉱山 | 山口 | 1936年 | |
喜多平鉱山 | 北平鉱山 | 山口 | 1947年 | |
河東鉱山 | 田島鉱山 | 福岡 | 1955年 | |
対州鉱山 | 佐須鉱山 | 長崎 | 1958年 | |
土呂久鉱山 | 外録鉱山 | 宮崎 | 1958年 | |
大吹鉱山 | 宮崎 | 1959年 | ||
秩父鉱山 | 赤岩鉱山 | 埼玉 | 1961年 | |
亀山盛鉱山 | 秋田 | 1970年 | ||
大谷鉱山 | 鹿児島 | 1970年 | ||
七里沢鉱山 | 三晃鉱山・三泰鉱山 | 宮城 | 1972年 | |
船岡鉱山 | 京都 | 1974年 | ||
石部鉱山 | 松籟山 | 滋賀 | 1978年 | |
五加鉱山 | 岐阜 | 1979年 | ||
黒川鉱山 | 岐阜 | 1979年 | ||
山宝鉱山 | 岡山 | 1980年 | ||
円山鉱山 | 北海道 | 1982年 | ||
灰山 | 滋賀 | 1985年 | ||
扇平鉱山 | 岡山 | 1986年 | ||
見立鉱山 | 宮崎 | 1997年 | ||
木浦鉱山 | 大分 | 1999年 | 閉山 | |
平尾鉱山 | 大阪 | 2001年 | ||
発盛鉱山 | 椿鉱山・ 八盛鉱山 | 秋田 | 2004年 | |
瀬波 | 白山 | 石川 | 2006年 | |
野門鉱山 | 栃木 | 2013年 | ||
銅ヶ丸鉱山[9] | 島根 | 2021年 |
性質・特徴
様々な色のものが存在する菱面体晶鉱物で、よく形成された結晶が見られることはごくまれである。代表的な形状は、ぶどう状、皮膜状の形である。モース硬度は4.5で、比重は4.4 - 4.5。方解石グループ特有の三方向に完全な劈開は弱くなっている。塩酸などの酸によく溶けて二酸化炭素を放出する。
菱マンガン鉱、菱鉄鉱と固溶体を形成する[3]。純粋なものは無色・白色だが、亜鉛イオンが大きいため、結晶構造に隙が生じ、銅(緑、青緑)、カドミウム(黄)、コバルト(ピンク)などのイオンが入り込んで多彩な色彩を呈する。
異極鉱と類似しており、2種類の異なる鉱物であると理解されるまでは、歴史的に同じものとして鑑定されていた。これらの2種は外観が非常に似ており、カラミンという名称は、いまだに両方に使われており、時に混乱を引き起こす。
用途・加工法
亜鉛鉱石の一つ。
ギャラリー
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ピンク色のもの(シナロア州、6.8 x 5.8 x 3.3 cm)
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僅かに桃色の二価マンガンを含む結晶(ツメブ産出、6.8 x 4.6 x 3.7 cm)
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ドロマイトに発生した二価銅を含む菱亜鉛鉱(ツメブ産出、4.4 x 4 x 3 cm)
脚注
- ^ Smithsonite (英語), MinDat.org, 2011年11月17日閲覧。
- ^ a b Smithsonite (英語), WebMineral.com, 2011年11月17日閲覧。
- ^ a b c “Handbook of mineralogy” (PDF) (英語). 2011年11月17日閲覧。
- ^ 文部省編『学術用語集 地学編』日本学術振興会、1984年、113頁。 ISBN 4-8181-8401-2。
- ^ a b “Smithsonite Value, Price, and Jewelry Information”. 国際宝石学会 (IGS). 2022年11月23日閲覧。
- ^ “日本の菱亜鉛鉱の産地”. NariNari@鉱物データベース (2021年). 2025年5月1日閲覧。
- ^ “日三市(ひさいち)鉱山跡”. 秋田県あきた未来創造部 地域づくり推進課 (2012年5月). 2025年5月1日閲覧。
- ^ “富山県上新川郡亀ケ谷鉱区鉛・亜鉛鉱床調査報告”. 産業総合研究所. 2025年5月1日閲覧。
- ^ “銅ヶ丸鉱山”. 鳥取大学. 2025年5月1日閲覧。
参考文献
- Tom Hughes, Suzanne Liebetrau, and Gloria Staebler, eds. (2010). Smithsonite: Think Zinc! Denver, CO: Lithographie ISBN 978-0979099861.
- Ewing, Heather P. (2007). The Lost World of James Smithson: Science, Revolution, and the Birth of the Smithsonian. London and New York: Bloomsbury. ISBN 978-1596910294(ヘザー・ユーイング 著、松本栄寿・小浜清子 訳『スミソニアン博物館の誕生 : ジェームズ・スミソンと18世紀啓蒙思想』雄松堂書店、2010年。 ISBN 978-4-8419-0572-4。)
- 松原聰、宮脇律郎『日本産鉱物型録』東海大学出版会〈国立科学博物館叢書〉、2006年、116頁。ISBN 4-486-03157-1、ISBN-13:978-4-486-03157-4。
- 青木正博『鉱物分類図鑑 : 見分けるポイントがわかる』誠文堂新光社、2011年、91頁。 ISBN 978-4-416-21104-5。
関連項目
外部リンク
- “A Chemical Analysis of some Calamines. By James Smithson.” (英語). From Smithson to Smithsonian. Smithsonian Institution Libraries. 2011年11月17日閲覧。
- 福岡正人. “Calcite〔方解石〕グループ”. 地球資源論研究室. 広島大学大学院総合科学研究科. 2003年1月5日時点のオリジナルよりアーカイブ。2011年11月17日閲覧。
- “菱亜鉛鉱”. 地質標本館. 産業技術総合研究所地質調査総合センター. 2011年11月17日閲覧。
- スミソナイトのページへのリンク