スピンと衝突時の角度
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/12 05:25 UTC 版)
「ボールの跳ね返り運動」の記事における「スピンと衝突時の角度」の解説
地面に衝突すると、ボールの衝突角度や角速度に応じて、並進運動エネルギーの一部が回転運動エネルギーに変換されたり、あるいは逆に回転運動エネルギーの一部が並進運動エネルギーに変換されることがある。ボールが衝突時に地面と水平の方向に動く場合、摩擦力はボールの進行方向と反対の向きの「並進」成分を持つ。上の図では、ボールは右に移動しているため、摩擦力はボールを左に押す向きの並進成分を含む。さらに、ボールが衝突時に回転している場合、摩擦力はボールの回転と反対の向きの「回転」成分を持つ。この図では、ボールは時計回りに回転しているため、地面と衝突する点は、ボールの重心に対して左に移動している。したがって、摩擦の回転成分はボールを右に押す向きに働くことになる。垂直抗力や重力とは異なり、これらの摩擦力はボールにトルクを及ぼし、ボールの角速度(ω)を変化させる作用がある。 ボールの回転の影響については以下のような事例が考えられる。 ボールにバックスピンがかかっている場合、並進による摩擦と回転による摩擦は同じ方向に作用する。ボールの角速度は、水平方向の速度と同様に衝突後は減少し、ボールは上向きに押し出され、場合によっては元の高さを超えてバウンドすることさえある。また、ボールが反対方向に回転し始め、衝突までの進行方向とは逆に跳ね返る場合もある。 ボールにトップスピンがかかっている場合、並進による摩擦と回転による摩擦の作用は反対方向である。この場合の運動は、2つの成分のどちらが支配的であるかによって決まる。ボールが移動するのに比べはるかに速く回転している場合、回転による摩擦が支配的になる。衝突後、ボールの角速度は減少し、水平方向の速度は増加する。ボールはそれまでの進行方向と同じ向きに押し出されるが、バウンドの最高点は低くなり、同じ向きに回転し続ける。 ボールが回転するのに比べはるかに速く動いている場合、並進による摩擦が支配的になる。衝突後、ボールの角速度は増加するものの、水平速度は減少する。ボールのバウンドはそれまでの高さを超えることはなく、同じ方向に回転し続ける。 地面が角度θだけ傾斜している場合、ボールに働く力などを含め全体が角度θだけ回転するが、重力だけは変わらず鉛直下向きに作用する(すなわち、地面と角度θをなす方向)。このとき、重力は地面に平行な成分を持つため、その成分が摩擦に寄与しボールの回転にも寄与する。 卓球やラケットボールなどのラケットスポーツにおいて、熟練者はスピン(サイドスピンを含む)を利用することで、地面や相手のラケットといった他の物体表面にボールが当たった際に、ボールの進行方向が突然変わるようにする。クリケットでも同様に、ボールがバウンド地点で大きく軌道変化するような投法(スピンボウリング)のさまざまな形態が存在する。
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