ショットキー=モット則とフェルミ準位のピン止め
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/08/10 00:40 UTC 版)
「金属半導体接合」の記事における「ショットキー=モット則とフェルミ準位のピン止め」の解説
ショットキー=モット則:接合されると、シリコンの仕事関数Φが銀の仕事関数にマッチするように、シリコンのバンドが曲がる。バンドは接合上でベンディングを保つ。このモデルは、銀はn型シリコンに対して非常に小さいショットキー障壁を持ち、良いオーミックコンタクトを作ると予言する。 金属誘起ギャップ状態からのフェルミ準位のピン止め効果を示した図:シリコンのバンドは表面状態により予め曲がっている。これらは接合の直前に再び曲がる(仕事関数をマッチするため)。しかし接合すると、バンドの曲がり方はAg-Si結合の化学的性質に依存して変化する。 銀とn型シリコンの接合の形成モデルのバンドダイアグラム。実際はこのショットキー障壁はおよそΦB = 0.8 eVである。 「金属誘起ギャップ状態」も参照 ショットキー障壁についてのショットキー=モット則は、半導体の真空電子親和力(またはイオン化エネルギー)と金属の真空仕事関数の差としてショットキー障壁高さを考える。 Φ B ( n ) ≈ Φ m e t a l − χ s e m i {\displaystyle \Phi _{\rm {B}}^{(n)}\approx \Phi _{\rm {metal}}-\chi _{\rm {semi}}} このモデルは真空中の2つの物質を接合する思考実験から導出され、半導体-半導体接合でのアンダーソンの法則の考えと同様のものである。多くの半導体で程度の差はあるがショットキー=モット則が成り立つ。 ショットキー=モット模型では半導体のバンドベンディングの存在を予言するが、ショットキー障壁の高さについては全く正しくないことが実験的にわかっている。フェルミ準位のピン止めと呼ばれる現象は、バンドギャップ中の状態密度が存在する点をフェルミ準位に固定(ピン止め)する。フェルミ準位のピン止めにより、ショットキー障壁高さは金属の仕事関数とほとんど無関係になる。 Φ B ≈ 1 2 E b a n d g a p {\displaystyle \Phi _{\rm {B}}\approx {\frac {1}{2}}E_{\rm {bandgap}}} ここでEbandgapは半導体でのバンドギャップのサイズである。 1947年にジョン・バーディーンは、バンドギャップ内のエネルギーを持ち電荷をもつことができる状態が半導体界面に存在すれば、フェルミ準位のピン止め現象は自然に生じると考えた。この状態は、金属との化学結合により誘起される(金属誘起ギャップ状態)か、真空中の表面ですでに存在していた(表面状態)かのどちらかである。この高密度な表面状態は金属から与えられた多量の電荷を吸収するため、半導体は金属の詳細な性質の影響を受けない。その結果半導体のバンドは、金属からの影響を受けずに、(高密度なために)フェルミ準位にピン止めされた表面状態に対する位置へと曲がりを調整する。 フェルミ準位ピン止め効果は多くの商業的に重要な半導体 (Si, Ge, GaAs)で強く、半導体デバイスの設計を難しくする。例えば、ほとんどすべての金属はn型ゲルマニウムに対して大きなショットキー障壁を作り、p型ゲルマニウムにはオーミックコンタクトを作る。これは、価電子端が金属のフェルミ準位に強くピン止めされているためである。これを解決するには、バンドのピン止めを取るために中間絶縁層(ゲルマニウムの場合、窒化ゲルマニウムが用いられる)を加える等のプロセスが必要である。
※この「ショットキー=モット則とフェルミ準位のピン止め」の解説は、「金属半導体接合」の解説の一部です。
「ショットキー=モット則とフェルミ準位のピン止め」を含む「金属半導体接合」の記事については、「金属半導体接合」の概要を参照ください。
- ショットキー=モット則とフェルミ準位のピン止めのページへのリンク