サルコペニアとは? わかりやすく解説

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サルコペニア【sarcopenia】

読み方:さるこぺにあ

筋肉量が低下し筋力または身体能力低下した状態。加齢よるもの原発性サルコペニア)と、不活動疾患低栄養などによるもの二次性サルコペニア)がある。主に高齢者にみられ、運動身体機能障害生じたり、転倒骨折危険性増大し自立した生活を困難にする原因となることがある筋肉減弱症


サルコペニア

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/06/29 09:59 UTC 版)

サルコペニア
概要
診療科 老人医学
分類および外部参照情報
ICD-10 M62.8
MeSH D055948

サルコペニア(sarcopenia)とは、加齢による骨格筋量の低下と定義され[1]、副次的に筋力有酸素運動能力の低下を生じる。筋肉量の低下を必須項目とし、筋力または身体能力の低下のいずれかが当てはまればサルコペニアと診断される[2]。量を制限する食事療法はサルコペニアのリスクを高めると指摘されている[3]

歴史的経緯

サルコペニアは、1989年にRosenbergによって「加齢による筋肉量減少」を意味する用語として提唱された。サルコペニアは造語で、ギリシア語でサルコ(sarco)は「肉・筋肉」、ペニア(penia)は「減少・消失」の意[4]。当初は骨格筋肉量の減少を定義としていたが、徐々に筋力低下、機能低下も含まれるようになった。上述の定義はEuropean Working Group on Sarcopenia in Older People(以下「EWGSOP」)のものであり、身体機能障害、クオリティ・オブ・ライフ(QOL)低下、死のリスクを伴う包括的な内容も含まれる。同年のヨーロッパ静脈経腸栄養学会(以下「ESPEN」)のコンセンサス論文では筋肉量減少と筋力低下を認める状態を、the Society of Sarcopenia,Cachexia and Wasting Disorders(以下「SCWD」)では筋肉量減少と身体機能低下を認める状態をサルコペニアと定義している。以上のように、サルコペニアの定義は現状では確定されたものはない。現段階での各学会の定義をまとめると、狭義では筋肉量減少のみが、広義では筋力低下や身体機能低下が含まれたものが「サルコペニア」と呼ばれている。

サルコペニアの分類

EWGSOPでは、サルコペニアを加齢に伴って生じる原発性(一次性)サルコペニアと、活動、栄養、疾患に伴って生じる二次性サルコペニアに分類している。

原発性
加齢性サルコペニア - 加齢以外に明らかな原因がないもの。
二次性
  1. 活動に関連する
    寝たきり、不活発なスタイル(生活)、失調や無重力状態が原因となり得るもの。
  2. 疾患に関連する
    重症臓器不全(心臓、肺、肝臓、腎臓、脳)、炎症性疾患、悪性腫瘍や内分泌疾患に付随するもの。
  3. 栄養に関係する
    吸収不良、消化管疾患、および食欲不振を起こす薬剤使用などに伴う摂取エネルギーおよび/またはタンパク質の摂取量不足に起因するもの。

また、サルコペニアのステージ分類として、下記のような3段階を定義している。

ステージ 筋肉量 筋力 身体能力
プレサルコペニア
サルコペニア または
重症サルコペニア

日本におけるサルコペニアの課題

  • 用語の混乱
現段階でサルコペニアの明確な定義はなく、それぞれの定義により別立てで新たな用語が使われることがある。サルコペニアを「加齢による」筋力低下・筋肉量低下とした場合、それ以外の要因の筋力低下・筋肉量低下をミオペニアと呼ぶことがある。また、加齢による「筋肉量減少」をサルコペニア、加齢による「筋力低下」をダイナペニアと定義する論文もある。ミオペニア、ダイナペニアともに各々においても定義が異なることがある。
  • 診断基準
EWGSOPが提唱したサルコペニア診断のアルゴリズムでは、歩行速度、握力、筋肉量が用いられる。サルコペニア診断におけるカットオフ値は欧米のデータによる算出が多く、日本人に適さないものがほとんどである。日本人対象のカットオフ値については、真田[1]や下方[5]らの研究で簡易基準が提唱された[6]。今後は、この診断基準が日本人のサルコペニア診断に有用であるか、検証する研究が求められる。しかし、『簡易評価法開発』の論文はデータ収集過程の不備により撤回された[1]

評価方法

サルコペニアの簡易な診断方法はいくつか提唱されている。

  • 「指輪っかテスト」
両手の親指と人差し指で輪を作り、ふくらはぎの一番太いところを輪で囲む。輪のほうがふくらはぎよりも大きければサルコペニアを疑う[7]
  • 「片足立ち」[8]
  • 「DEXA・CTスキャン」(身体画像イメージ法)
2つの画像イメージ法が筋肉量や除脂肪体重の測定に使用されてきた。コンピュータ断層撮影(CTスキャン)、二重エネルギー X線吸収測定法(dual energy X-ray absorptiometry:DEXA)である。CTおよびMRIは、体内の他の軟部組織から脂肪を切り離すことができる。非常に正確な画像システムであると考えられており、これらの方法は、研究において筋肉量を測定するゴールド・スタンダードとされている。
  • Asian Working Group for Sarcopeniaによる診断基準[9]では、DEXAで男性は≦7.0kg/m2、女性は≦5.4kg/m2でサルコペニアと診断される。
  • 「生体インピーダンス分析」(bioimpedance analysis:BIA)
生体インピーダンス分析(BIA)は、脂肪量と除脂肪量を測定するものである。テスト自体は高価ではなく、使いやすく、再現性も高く、歩行可能な患者にも寝たきりの患者にも適している。標準条件下で用いられてきたBIA測定法は、10年以上研究されており、標準条件下でのBIA結果は MRI と良好な相互関係が認められてきた[10]。BIA機器はインボディタニタが販売している機器が主流となっている。
  • Asian Working Group for Sarcopeniaによる診断基準[9]では、BIAで男性は≦7.0kg/m2、女性は≦5.7kg/m2でサルコペニアと診断される。

参考文献

  1. ^ a b c 真田樹義、宮地元彦、山元健太、ほか「【原著】撤回:日本人成人男女を対象としたサルコペニア簡易評価法の開発」『体力科學』第59巻第3号、2010年6月1日、291-302頁、doi:10.7600/jspfsm.59.2912013年5月5日閲覧 
  2. ^ 厚生労働科学研究補助金(長寿科学総合研究事業)高齢者における加齢性筋肉減弱現象(サルコペニア)に関する予防対策確立のための包括的研究 研究班「サルコペニア:定義と診断に関する欧州関連学会のコンセンサスの監訳とQ&A」(PDF)『日本老年医学会雑誌』第49巻第6号、2012年、788-805頁、doi:10.3143/geriatrics.49.7882013年4月29日閲覧 
  3. ^ 筋肉を作る蛋白質から食べてインスリンの分泌を促す 日経メディカルオンライン 記事:2017年12月26日
  4. ^ サルコペニアとは”. 公益財団法人長寿科学振興財団. 2018年1月28日閲覧。
  5. ^ 下方浩史、安藤富士子「日常生活機能と骨格筋量、筋力との関連」『日本老年医学会雑誌』第49巻第2号、2012年3月25日、195-198頁、doi:10.3143/geriatrics.49.195NAID 100311309132019年6月6日閲覧 
  6. ^ 葛谷雅文、雨海照祥編集『栄養・運動で予防するサルコペニア』(初)医歯薬出版株式会社、2013年。 ISBN 978-4-263-70614-5 
  7. ^ 第56回日本老年医学会学術集会での飯島勝矢の報告 - Medical Tribune.(要登録)
  8. ^ 筋肉量を保持して若々しい身体を保つ! 〜サルコペニアを予防しよう〜 - タニタの健康応援ネット。
  9. ^ a b Chen LK; Liu LK; Woo J; et al (2014-02). “Sarcopenia in Asia: consensus report of the Asian Working Group for Sarcopenia”. J Am Med Dir Assoc 15 (2): 95-101. doi:10.1016/j.jamda.2013.11.025. PMID 24461239. 
  10. ^ 厚生労働科学研究補助金(長寿科学総合研究事業) 高齢者における加齢性筋肉減弱現象(サルコペニア)に関する予防対策確立のための包括的研究研究班「サルコペニア:定義と診断に関する欧州関連学会のコンセンサス―高齢者のサルコペニアに関する欧州ワーキンググループの報告―の監訳」『日本老年医学会雑誌』第49巻第6号、2012年、788-805頁、doi:10.3143/geriatrics.49.788 

関連項目

外部リンク


サルコペニア

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/08/20 05:26 UTC 版)

フレイル (医学)」の記事における「サルコペニア」の解説

サルコペニア(ギリシャ語で「肉の貧困」を意味する)は、加齢に伴う骨格筋の量、質、および強度退行性の喪失筋力低下割合は、運動レベル併存疾患栄養状態などに依存します。サルコペニアは、機能的状態の低下もたらし脱力感増大から著し障害引き起こす可能性がある。筋力低下は、不完全に理解されているものの、筋合シグナル伝達経路変化関連している。この細胞メカニズムは、サイトカインを介して筋肉分解される悪液質のような他のタイプ筋萎縮とは異なるが、両方の状態が共存している可能性がある。

※この「サルコペニア」の解説は、「フレイル (医学)」の解説の一部です。
「サルコペニア」を含む「フレイル (医学)」の記事については、「フレイル (医学)」の概要を参照ください。

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