サイマルテニアスエンジニアリングとクロスファンクショナルチーム
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/11/15 09:48 UTC 版)
「先行製品品質計画」の記事における「サイマルテニアスエンジニアリングとクロスファンクショナルチーム」の解説
APQPの基本となっているのは、サイマルテニアスエンジニアリング(コンカレントエンジニアリング)とクロスファンクショナルチームの二つの考え方である。APQPの手引書では、製品の効果的な品質計画を達成するためにクロスファンクショナルチームを組織するべきであるとし、クロスファンクショナルチームが共通の目標に向かって努力するプロセスがサイマルテニアスエンジニアリングであるとしている。 サイマルテニアスエンジニアリング(コンカレントエンジニアリング)とは、一般に、設計の成果を実際に実現するメンバーを、最大限に設計のフェーズに参加させるような体制づくりのことである。つまり、設計フェーズの進行中に後に続くフェーズを次々に開始していくことになる。しかし、サイマルテニアスエンジニアリングは、単に、機械的に各フェーズを早めに開始することではなく(そのような方法はファースト・トラッキングと呼ばれる)、設計以降の各フェーズで実務を担当する各グループ同士が設計の進行状況に合わせて情報をフィードバックし合うことが本質的な要素として含まれている。 APQPでは品質の高い製品を早期に導入することをサイマルテニアスエンジニアリングの目的として掲げている。プロジェクトを遂行する各グループはそれぞれが様々な役割を持っているが、中でも品質計画グループは他のグループの計画やその実施がプロジェクトの目標に向かっているかどうかを監督する役割を担っている。 ところで、例えば、製品および製造プロセスの設計・開発の期間をいくつかのフェーズに分けるための、10通りの方法をVDAの手引書が例示しているように 、フェーズの分け方は一般にいろいろな方法がある。APQPでは、企画から量産までを以下の5つのフェーズに分けている。 プログラムの企画および確定(Plan and Define Program) 製品の設計および開発(Product Design and Development) 製造プロセスの設計および開発(Process Design and Development) 製品および製造プロセスの検証試験(Product and Process Validation) フィードバック、評価及び是正(Feedback, Assessment and Corrective Action) 一つのフェーズが完了してから次のフェーズに移ることにするとすると、それは手堅い方法ではあるが、量産開始までの時間は長くかかる。次のフェーズを先行して始めることにすると量産開始までのトータルの時間は当然短くはなるが、先行するフェーズが見込み通りに終わらなかったときに、すべてやり直しになってしまう危険はある。例えば、AIAGの手引書に掲載されている図によれば、設計・開発が完全に完了する時点で、製品および製造プロセスのヴァリデーション(検証試験)が既に始まっており、そのスケジュールの主要部分の三分の一以上を消化していることになっている。設計の最後の時点で大幅な設計変更があれば、それまでに行ってきたヴァリデーションの成果は無駄になるかもしれない。 ところで、例えば開発を担当する部署と生産準備を担当する部署は通常別の部署であるが、上に述べたとおりサイマルテニアスエンジニアリングを実現するためには、各部署が緊密に連携し、情報をフィードバックし合う必要がある。このとき、例えば、部署の長が他の部署からの依頼を受け、そのたびに実務担当者に業務を割り振るようなやり方をしていたら、それはとても都合が悪い。そこで部署の長はある特定のプログラムに対して専任の担当者を指名し、その担当者はそのプログラムのプロジェクトマネージャーの指揮下に入る。このように各部署からそのプログラム担当する代表者を集めたチームがクロスファンクショナルチームである 。それぞれの担当者はプロジェクトマネージャーの指示で業務を進める。しかし、担当者の居場所は自分の所属部署のままである。所属部署の上司に対してはプロジェクトの進捗などを報告し、所属部署の方針を守りながら他の部署のプロジェクトメンバーとプロジェクトを遂行していくことになる。ISO/TS16949:2009 でいうところの「多様な分野からのアプローチ(Multidisciplinary approach)」とは、具体的には、このクロスファンクショナルチームを組織することを意味する。
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