ゲルマン神話における双子とインド・ヨーロッパ神話における双子の馬
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/07/11 09:01 UTC 版)
「ヘンギストとホルサ」の記事における「ゲルマン神話における双子とインド・ヨーロッパ神話における双子の馬」の解説
いくつかの文献から、ゲルマン人には双子の兄弟を神聖なものとして崇める慣習があったことが知られている。双子信仰に最も早く言及しているのが、古代ギリシアの歴史家ティマエウス (紀元前345年ごろ – 紀元前250年ごろ)である。彼は北海のケルト人について、彼らが(ギリシア人であるティマエウスが解釈するところの)カストルとポルックスを崇拝していると記録している。ローマの歴史家タキトゥスは『ゲルマニア』の中で、アルキスという同じくカストルとポルックスのような若い双子の兄弟が崇拝されていたと述べている。ゲルマン人自身の伝説の中でも、双子に関係するものは数多い。1世紀から2世紀のローマの歴史家カッシウス・ディオは、ハスティンギ族がラオスとラプトスという兄弟に率いられていたとしている。8世紀のパウルス・ディアコヌスの『ランゴバルド人の歴史』ではランゴバルド人を引き連れスカンディナヴィアから南へ向かったイブルとアイオの兄弟が、12世紀のサクソ・グラマティクスの『デンマーク人の事績』ではデーン人の移民を率いたアッギとエッビの兄弟が紹介されている。より広くインド・ヨーロッパ語族の視点から見れば、ギリシアのディオスクーロイ(カストルとポルックス)もゲルマン人の双子信仰と関連しているといえる。こうしたインド・ヨーロッパ語族の「神聖な双子」文化は、古インド・ヨーロッパ語族の文化から派生したものだと考えられている。 現代の印欧語学者J・P・マロリーは、インド・ヨーロッパ系の兄弟伝説における馬の重要性を示す例として、ヘンギストとホルサのようなあらゆる伝説的兄弟を見ることができるとしている。 我々はここまでに、いかに古インド・ヨーロッパ社会に根深い馬の存在を、それも単なる言語再建上の問題のみならず、「馬」という言葉が様々なインド・ヨーロッパ人の名前に含まれているところにも見て取ってきた。さらに、インド・ヨーロッパの儀式や神話における馬の重要性についても見てきた。もっとも明白な例と言えるのが、繰り返し登場してくる双子、例えばIndic Asvinsの「騎手」、ギリシアの騎手カストルとポルックス、アングロサクソン人の伝説的な入植者ホルサとヘンギスト……アイルランドでマッハが馬との競争の後に産んだ双子などが挙げられる。こうしたすべての例が、インド・ヨーロッパの神聖な双子が馬とともに、もしくは馬によって象徴されていることを証明しているのだ。
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