ケータイ小説家
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/08/03 06:49 UTC 版)
ケータイ小説の作家のことをケータイ小説家という。ほとんどのライターがハンドルネームで、プロフィールはあまり公開されない。ケータイ小説家は、実話をもとにした作品を発表することが多いこともあり、あまりメディアに顔を出さない傾向にある。特にケータイ小説家の多くが苗字を欠いた名前だけのハンドルネームを使用しており、社会学者の土井隆義はこの理由について、ケータイ小説家は(従来の文学作品のように)社会に対して何らかの価値観や意義を提示しようとするのではなく、自身と近しい感性のひとだけを想定して作品を発信している意識の現われであると説明している。詳しいプロフィールも明かされないことで、作者の輪郭がはっきしていない謎として読者の心をつかみ、フィクションかノンフィクションか区別させにくく、よりストーリーに引き込まれるとの指摘もある。伊東おんせんは作中に登場している人物に迷惑がかかることを考えて顔出しをしない人が多いとしている。 小説家の清水義範は、ブログやウェブサイトなどネットでの創作活動を通して、小説家が現われることはないと考えている。そして「あの発表形式がお手軽に自己顕示欲を満たしてくれるから」、「うまく書いて感心させてやろうという意識には、結びつかず、私の書いていることに価値があるのだという意識に流れてしまう」と述べ、仮にベストセラーになる作品があっても、その著者が時の人になっても、小説雑誌から原稿依頼が舞い込むような本格的な小説家にはならないだろうし、本人もそれを望んでいるわけではないだろうと結論付けている。杉浦由美子も、そもそもケータイ小説家には作家になることを望んでいないものが多いとし、作家を生業とするつもりがなければ客観的には一発屋であってもかまわないし、携帯電話というメディアがあれば新しい書き手は供給され続けると述べている。前述(#リアル・リアリティ)したように体験記・日記のような感覚が執筆する例が初期には多かったが、時間の経過につれて小説家になることを志望して執筆を行う傾向も生まれている。
※この「ケータイ小説家」の解説は、「ケータイ小説」の解説の一部です。
「ケータイ小説家」を含む「ケータイ小説」の記事については、「ケータイ小説」の概要を参照ください。
- ケータイ小説家のページへのリンク