クルムヘトロジャン『へろ』
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「不条理日記」の記事における「クルムヘトロジャン『へろ』」の解説
「SF大会編」は、吾妻が星雲賞を受賞した1979年の第10回日本SF大会(MEICON III)を題材にした、一種のレポート漫画であるが、その中に、SF大会の合宿企画で開かれたオークションで、「スタージョンの「にふへんへほう」」、「ベーホの「ふるむまかをめら」」、「クルムヘトロジャンの「へろ」」といった書物が次々とオークションにかけられる場面がある。吾妻は「おー クルムヘトロジャンが!!」と声を上げるが、なぜか参加者たちからにらみつけられ、追われるようにその場を逃げ出す。 『にふへんへほう』は『人間以上(英語版)』のもじりと思われるが、他の2冊とその著者は実在しない。 ところが、翌1980年の第11回日本SF大会(TOKON VII)で、『不条理日記』のこのシーンを現実化しようとする企画が持ち上がり、実際に『へろ』が、「ウロン文学選集」の第11巻(第1回配本)という設定で制作されることになった。装幀は国書刊行会の「ラテンアメリカ文学叢書」のコピーで、「クルムヘトロジャン著、神羽黎・片野隆之訳、知佳舎発行」という名義となっており、本文のイラストは吾妻ひでお、序文は矢野徹、「月報」には高橋留美子のイラスト、萩尾望都、新井素子、とり・みきらによる小文が寄せられていた。版元の知佳舎は、熱狂的な吾妻ファンだった米沢嘉博が、主宰していたファンジン組織。 限定300部が通しナンバー付きで制作され、2番から30番までがハードカバー革装の特別限定版となっており、1番は吾妻の肉筆原画入りで、これが実際にSF大会でオークションにかけられている。なお「ウロン語」は、吾妻の『やけくそ天使』に登場する架空の言語である。 吾妻による TOKON VII のレポート漫画「ダーティしでおの大冒険」(『奇想天外』1980年10月号)には、吾妻が『へろ』のオークションに遭遇して「だからSFファンのやることは恐ろしいというのだ!」と叫ぶ場面がある。 さらに翌1981年にも、『ふるむまかをめら』が第2回配本として制作された。序文は川又千秋で、「月報」にはいしかわじゅんのイラスト、横田順彌の小文が寄せられた。短編集で、阿島峻訳「ふるむまかをめら」、神羽黎訳「飛翔のための手記」、片野隆之訳「遥かなる旅立ち」、和都ありや訳「緑樹の奥」の4編が収録され、普及版のみが制作された。 吾妻の没後、2020年5月に『復刻版 ウロン文学選集』が復刊ドットコムより限定版として刊行された。 また、とり・みきの『るんるんカンパニー』には、秋田冒険王先生がクルムヘトロジャンの『へれもこそ』という小説を翻訳する場面がある。
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