クルアーンとイスラム法 / シャリーア
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/08/02 04:34 UTC 版)
「クルアーン」の記事における「クルアーンとイスラム法 / シャリーア」の解説
イスラーム法 主な法概念クルアーン • シャリーアハディース • スンナイジュマー • キヤースイジュティハードシューラー • イフティラーフアクル • ラーイ • フィトナズィンミー• フィクフマズハブ 主な法学者ジャアファル・サーディクアブー・ハニーファイブン・ハンバルマーリク・イブン・アナスシャーフィイー 主な法学派ジャアファル法学派ハンバル学派シャーフィイー学派マーリク学派ハナフィー学派 表 話 編 歴 イスラム法学では、クルアーンは神の言葉そのものであるという性質上、イスラム法(シャリーア)のもっとも重要な法源であり、イスラーム法体系における憲法にあたる。 しかしクルアーンは宗教の信仰に関して語る部分も多く、ムハンマドの死後、最後の啓示が下されてから何十年も経つと、拡大したイスラーム共同体の現状に対して十分に対処できない面が大きくなった。そこで、生前のムハンマドに直に接していた教友たちから口伝えによって伝承されてきたムハンマドの言行をハディースとしてまとめ、クルアーンに欠けた部分を補ったり、クルアーンを解釈する助けとすることが始められた。ムスリムにとって、ムハンマドは神の意志をもっとも完全に体現し、語り実行していた存在であるとみなされるので、ハディースに伝えられるムハンマドの言葉や行動は、人間であるムハンマドに由来する神の被造物のひとつであるけれども、神そのものに由来する内実の意味を含んでいたとされる。そこで、ハディースを用いることで法源としてクルアーンを補うことができる。 スンナ派における法源学では、第一のクルアーン、第二のハディースに第三のイジュマー(合意)、第四のキヤース(類推)を加えて四大法源とする。イスラム法学では、上位の法源では解決できない問題に限って下位の法源をあたることが許されるため、クルアーンに反する法規定が存在することは原則としてありえない。これは、法源にイマームの見解を重視するシーア派でも同じである。 しかし近代には、西洋のキリスト教社会から押し寄せた近代化の波が、クルアーンに基づくイスラム法と近代社会の間の齟齬を一気に拡大させることになった。これに対してムスリムたちは、サウジアラビアのように厳格なイスラム法学派(ワッハーブ派)を適用してイスラーム法に基づく社会の再構築をはかることもあったが、多くのイスラム法学者は四大法源に基づきつつもイスラム法を柔軟に解釈して現代社会に適合させていき、また多くの国の政府はイスラム法に加えて政府や議会が制定する西洋的な近代法をイスラーム法に付加させて対応した。イスラム法のいっさいを廃止しヨーロッパから持ち込んだ近代法一本に改めたトルコはその極端な例である(世俗主義)。こうした西洋文明の衝撃に対して行われてきたイスラーム法の変容に対する異議申し立てがイスラム主義(いわゆるイスラム原理主義)であり、彼らの多くは政治的にはクルアーンなどを法源とする伝統的なイスラーム法(シャリーア)によるイスラム国家の建設を主張している。
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