クモガタ類の触肢
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/02 05:02 UTC 版)
クモの雄 サソリ ウデムシ サソリモドキ ヒヨケムシ ザトウムシ(アカザトウムシ亜目) ダニの顎体部 クモガタ類(クモ形類、蛛形類、Arachnida)の触肢は多様で、分類群により単調な歩脚状からあらゆる形まで多岐にわたる。コヨリムシを除き、クモガタ類の触肢は形態(脚とは明らかに異なる)や見かけ上6節の肢節数(蹠節 metatarsus はなく、7節以上の脚より少ない)により明確に脚から区別され、感覚や捕食などという歩行以外の機能を担っている。節口類とは異なり、多くのクモガタ類は触肢基節のみ内突起をもつ。基節が往々にして口の左右を覆いかぶさり、直前にある鋏角・上唇 (labrum)・口上突起 (epistome) などと共に何らかの複合体を構成する場合もある。 クモの触肢は短い歩脚状で感覚や摂食を補助するのに用いられ、基節の内突起は口の左右を覆いかぶさった下顎 (maxilla) となる。性的二形で、雄の場合では同時に交接用の器官でもあり、先端の腹面には精液を蓄える触肢器(palpal organ, 移精器官)という複雑な構造体をもつ。 サソリの触肢は捕獲器であり、先端2節が発達した鋏状である。基節は口の左右を覆いかぶさり、鋏角・上唇・第1-2脚の顎葉(coxapophyses)と共に「stomotheca」という口器を構成する。 カニムシの触肢はサソリによく似た鋏状である。ただしカニムシの場合、触肢基節の内突起が口上突起と癒合して「rostrum」という嘴状の口器をなし、鋏に毒腺をもつ。 ウデムシの触肢は鎌状の捕獲器であり、第3-4節が腕のように折りたたみ、内側に棘が生えている。 サソリモドキとヤイトムシの触肢も鎌状の捕獲器であるが、ウデムシほど極端ではない。サソリモドキの場合、触肢の先端2節が鋏となり、直前の第4節も発達した棘が1本ある。 ヒヨケムシの触肢は脚のように発達した歩脚状で、収納可能な吸盤 (suctural organ) を先端にもつ。基節はカニムシに似て、口上突起と癒合して嘴状の rostrum を構成する。主に感覚と捕食に用いられ、平滑な表面を登る時も役に立つ。 ザトウムシの触肢は基本ではクモに似た歩脚状だが、捕獲器に特化した種類も少なくない。例えばアカザトウムシ亜目(英語版)では内側に棘が生えて、しばしば強大な鎌状となる。イトグチザトウムシ科(英語版)では表面がモウセンゴケのように、小さな虫を粘りつく粘毛が生えている。基節の内突起は直後の第1-2脚のものと共に顎葉となり、これはサソリに似て、鋏角・上唇などと共に stomotheca を構成する。 クツコムシの触肢は目立たなく、短い鎌のように前体の下に折りたたまれる。先端には小さな鋏と感覚器があり、感覚と物を掴む機能を兼ね備えたと考えられる。 ダニの触肢は基本として短い歩脚状であるが、基節が高度に癒合し、鋏角や口上突起などと共に顎体部 (gnathosoma) を構成する。 コヨリムシの触肢は短い歩脚状であるが、他のクモガタ類とは異なり、見かけ上9節で、脚のように歩行に用いられる。
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