キリスト教資料
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/17 05:52 UTC 版)
初期のキリスト教徒はイエスに関する伝承を書きとめ、語録をまとめ、編集した。その中でもっとも重要なものはキリスト教の正典と認められ『新約聖書』の前半部分となった四福音書(しふくいんしょ)すなわちマタイ、マルコ、ルカ、ヨハネによる各福音書である。各書の成立時期は、説によって幅があるが、最初に成立した『マルコによる福音書』がイエスの刑死から約40年後の西暦70年より少し前、最後の『ヨハネによる福音書』は1世紀末頃と推定されている。キリスト教徒が書いた文書で後世に伝わった最古の文書はパウロが書いた手紙である。パウロの手紙の中で最古のものは『テサロニケの信徒への手紙一』で、イエスの刑死から約20年後の西暦50年頃あるいは50年から52年頃に書かれたと推定されている。パウロの手紙はキリスト教神学にとって重要だが、史的イエスの生涯を知るための情報はほとんど含まれていない。 バート・アーマン(英語版)やRobert Eisenmanなどキリスト教会の伝統的見解に批判的な学者は、史的イエス研究に伴う問題を検討する中で、福音書は矛盾に満ちている文書で、イエスの死後数十年経ってからイエスの生涯の出来事を目撃していない著者によって書かれたものだと述べている。さらに福音書の著者たちはその出来事の同時代の目撃者ではなく、イエスを直接には知らず、イエスがしたことを実際に見たわけではなく、イエスが教えたことをその場で聞いたわけでもなく、著者たちはギリシア語で福音書を書いたのであって、イエスと言語さえも共有しなかったという。著者たちが書いた説明は公平なものではなく、イエスを現に信じていたキリスト教徒によって書かれたものであり、その話は著者たちの偏向にかんがみて歪曲を免れなかった。アーマンによれば福音書の内容は多くの点で矛盾していて、イエスという人物の細部でも全体像の点でも食い違いと撞着に満ちている。
※この「キリスト教資料」の解説は、「史的イエスの資料」の解説の一部です。
「キリスト教資料」を含む「史的イエスの資料」の記事については、「史的イエスの資料」の概要を参照ください。
- キリスト教資料のページへのリンク