オーステナイト・フェライト系の工業的発明
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「ステンレス鋼の歴史」の記事における「オーステナイト・フェライト系の工業的発明」の解説
詳細は「オーステナイト・フェライト系ステンレス鋼#歴史」を参照 1927年、米国のユニオンカーバイドのE.C.ベインとW.E.グリフィスが、オーステナイトとフェライトが併存する組成範囲を示した鉄・クロム・ニッケル三元系状態図を初めて報告した。この報告によると、クロム量 23 % から 30 %、かつニッケル量 1.2 % から 9.7 % でオーステナイト・フェライト二相が現れるということであった。しかし、彼らの報告では、その材料特性に触れることはなかった。 1929年または1930年、スウェーデンで二相ステンレス鋼の鋳造品が製造された。実用化したのはアーヴェスタ社(スウェーデン語版)で、炭素量が多かったオーステナイト系ステンレス鋼で起きていた粒界腐食への対策として開発された。これがオーステナイト・フェライト系の最初の製造と考えられている。造られた鋼種は2種類で、"453E"と"453S"と名付けられた。453Eの組成はクロム 20 %、ニッケル 5 % で、耐熱用として販売された。453Sの組成は、453Eの組成にモリブデン 1 % が加わったもので耐食用として販売された。特に453Sが広く利用されたという。 また一方、1933年、フランスでジェイコブ・ホルツァー社(フランス語版)が二相ステンレス鋼を偶然的に造り出し、その鋼種の対粒界腐食性が高いことを発見した。モリブデン入りのオーステナイト系を製造する際に、誤ってクロムを多量に添加してしまったことが発見のきっかけであった。クロム 18 %、ニッケル 9 %、モリブデン 2.5 % を目標にしたが、クロム 20 %、ニッケル 8 %、モリブデン 2.5 % から成る鋼種が出来上がった。ジェイコブ・ホルツァー社は1935年にこの鋼種を特許出願し、1936年に特許登録された。 アーヴェスタ社の453Sは、サルファイトパルプのパルプ産業などで使われた。フランスでは、"UR50" という二相ステンレス鋼が売り出され、石油精製、食品産業、パルプ産業、製薬業などで利用された。ただし、当時に発明されたオーステナイト・フェライト系鋼種は良好な特性を持ち、一定の活用はなされたものの、溶接部の熱影響部で靭性と耐食性が低下するという欠点があった。この欠点のため、オーステナイト・フェライト系の利用は当面のあいだ狭い範囲に限られることとなる。
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