ウィグナー関数の時間発展方程式
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/13 05:26 UTC 版)
「ウィグナー関数」の記事における「ウィグナー関数の時間発展方程式」の解説
詳細は「ウィグナー・ワイル変換(英語版)」および「位相空間表示(英語版)」を参照 ウィグナー変換は、ヒルベルト空間上の作用素 ^G を位相空間上の関数 g(x,p) へと写す可逆な変換であり、以下のように定義される。 g ( x , p ) = ∫ − ∞ ∞ d s e i p s / ℏ ⟨ x − s 2 | G ^ | x + s 2 ⟩ {\displaystyle g(x,p)=\int _{-\infty }^{\infty }\mathrm {d} s~e^{ips/\hbar }\langle x-{\frac {s}{2}}|\ {\hat {G}}\ |x+{\frac {s}{2}}\rangle } エルミート演算子は実関数に写される。 位相空間からヒルベルト空間への逆変換はワイル変換と呼ばれる。 ⟨ x | G ^ | y ⟩ = ∫ − ∞ ∞ d p h e i p ( x − y ) / ℏ g ( x + y 2 , p ) {\displaystyle \langle x|\ {\hat {G}}\ |y\rangle =\int _{-\infty }^{\infty }{\mathrm {d} p \over h}~e^{ip(x-y)/\hbar }g\left({x+y \over 2},p\right)} (別の定義のワイル変換も存在することに注意。) この項で取り扱ってきたウィグナー関数 P(x,p) は、密度行列 ^ρ をウィグナー変換したものと捉えることができる。よって、ある作用素と密度行列をかけたもののトレースは、その作用素をウィグナー変換したもの g(x, p) と、ウィグナー関数との位相空間上の重なり積分と等しい。 シュレーディンガー描像における密度行列の時間発展を記述する、フォン・ノイマン方程式のウィグナー変換は ウィグナー関数に対するモヤル方程式 ∂ P ( x , p , t ) ∂ t = − { { P ( x , p , t ) , H ( x , p ) } } {\displaystyle {\partial P(x,p,t) \over \partial t}=-\{\{P(x,p,t)~,~H(x,p)\}\}} に帰着する。ここで、H(x,p) はハミルトニアン、{{•, •}}はモヤル括弧(英語版)を表わす。古典極限 ħ → 0 では、モヤル括弧はポアソン括弧に帰着し、従ってこの時間発展方程式は古典統計力学におけるリウビル方程式に帰着する。 Quantum characteristicsの記法[訳語疑問点]を用いて、上の方程式の形式的な厳密解は以下のように書ける。 P ( x , p , t ) = P ( ⋆ ( x − t ( x , p ) , p − t ( x , p ) ) , 0 ) {\displaystyle P(x,p,t)=P(\star (x_{-t}(x,p),p_{-t}(x,p)),0)} ここで x t ( x , p ) {\displaystyle x_{t}(x,p)} と p t ( x , p ) {\displaystyle p_{t}(x,p)} はいわゆる量子ハミルトン方程式の解で、初期条件 x t = 0 ( x , p ) = x {\displaystyle x_{t=0}(x,p)=x} 及び p t = 0 ( x , p ) = p {\displaystyle p_{t=0}(x,p)=p} に従い、 ⋆ {\displaystyle \star } 積の合成は全ての関数について成り立つものとする。 ⋆ {\displaystyle \star } 合成は完全に非局所(モヤルが指摘したように、「量子確率流体」は拡散する)であるため、通常はウィグナー関数の発展につれて、局所的な軌道のなごりはほとんど確認できなくなる。 ⋆ {\displaystyle \star } 積の積分表示においては、 ⋆ {\displaystyle \star } 積を連続的に位相空間経路積分に適用することで、このウィグナー関数の発展方程式を解くことができる(以下も参照)。 ウィグナー関数の時間発展の例 図4: モースポテンシャル: U ( x ) = 20 ( 1 − e − 0.16 x ) 2 {\displaystyle U(x)=20(1-e^{-0.16x})^{2}} (原子単位(a. u.))。緑の点線はハミルトニアンの等値線を示す。 図5: 4次ポテンシャル: U ( x ) = 0.1 x 4 {\displaystyle U(x)=0.1x^{4}} (原子単位(a. u.))。実線はハミルトニアンの等値線を示す。 図6: ポテンシャル障壁を越える量子トンネリング: U ( x ) = 8 e − 0.25 x 2 {\displaystyle U(x)=8e^{-0.25x^{2}}} (原子単位(a. u.))。実線はハミルトニアンの等値線を示す。
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