インフレーションの原因
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/01/03 03:54 UTC 版)
「ヴァイマル共和政のハイパーインフレーション」の記事における「インフレーションの原因」の解説
ドイツ政府は第一次世界大戦において、戦費のための膨大な財政需要を国民に対する増税ではなく、主に国債の発行によって賄った。その際に国民に国債を購入させて民間の通貨を吸収するのではなく、主に帝国銀行に購入させて紙幣を増発したため、通貨流通量の急増を招いた。戦争終結後は、まず現物による賠償を連合国によって迫られたが、連合国に対する現物引き渡しは無償であっても、その元の所有者または生産者に対してはドイツ政府が代金を払わなければならず、引き続き大きな財政需要となった。そして賠償委員会によって決定された賠償金の支払いはさらに巨大な財政負担となった。ルール占領に対する消極的抵抗では、労働者に対する経済的支援をしなければならないのに対し、ルール地方からの税収はまったく得られなくなったため、財政赤字をさらに拡大することになり、これらがすべて通貨増発へとつながった。マルクの供給量が増加した結果、その価値は急激に下がり、マルク安をもたらした。 それにより、ドイツにおける財の価格が急騰するとともに、ドイツ政府の運営費用が増大し、税の支払い通貨であるマルク安が続いたために増税によっては財政を賄うことができなくなった。結果的に生じた赤字を国債の発行や単純な紙幣増発の組み合わせで賄い、これらの影響でマルク建て資産の市場供給量が増加し、一層の通貨価値の下落を招いた。ドイツ市民は、通貨価値が急激に目減りしていくことに気づくと、早く消費しようとした。これにより高まった貨幣の流通速度は、かつてない速度で価格を上昇させ、悪循環を形成した。 インフレーションは政府の租税収入を大幅に減少させる効果を持った。租税を査定する時点と、実際に納税される時点の間に貨幣価値が大きく下落してしまうので、租税がほとんど意味をなさなくなるのである。一方政府が帝国銀行に対して公債を渡して増発した帝国銀行券は、実際にその価値が下落するまでの時間差により、政府が利益を得ることになる。このため、1923年10月には財政収入の98パーセントが帝国銀行の公債引き受けによるものとなっており、租税は1パーセントあまりとなっていた。そのため「インフレーションという租税」にますます国家が頼るようになり、それがさらにインフレーションを促進した。
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