イブン・バーッジャ
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イブン・バーッジャ(アラビア語: ابن باجّة Ibn Bājjah、أبو بكر محمد ابن يحيى ابن الصائغ ابن باجّة التُجيبي الاندلسي السرقسطي Abū Bakr Muḥammad ibn Yaḥyā ibn al-Ṣā'igh ibn Bājja al-Tujībī al-Andalusī al-Saraqusṭī、1095年? - 1138年)は、スペイン・アンダルシア地方で活躍したイスラム哲学者、政治家。ムラービト朝の宰相としての政務のかたわらアリストテレス哲学を研究する。イブン・ルシュドを頂点とする西方イスラーム哲学の歴史に現れた最初の哲学者で、神秘主義を排除し、徹底した合理主義を唱え、後のヨーロッパの哲学に大きな影響を与えたイブン・ルシュドの思想の基礎作りを行った重要な人物である。ヨーロッパ語圏では、ラテン語化されたアヴェンパーケ(Avempace)の名でもよく知られている。イブン=トゥファイル、イブン=ルシュドとならぶアンダルス地方の代表的な哲学者、詩人、音楽家である。
- 1 イブン・バーッジャとは
- 2 イブン・バーッジャの概要
- 3 関連項目
イブン・バーッジャ
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「イスラーム哲学」の記事における「イブン・バーッジャ」の解説
西方イスラーム哲学は、イブン・バーッジャ(?-1138年)に始まる。ヨーロッパではラテン語化されたアヴェンパーケという名で知られている。彼は、王朝の宰相を務めていた政治家でもあった。彼は、行政に関することでもあるが、仕事のために様々な知識を持ち合わせていた。このような政治家としてのプロフィールも反映して、彼は、ガザーリーのような神秘主義的な傾向を嫌った。 彼は、神秘家が求めるような感性的な能力ではなく、理性的な能力(知性)でこそハック(真理)が捉えられると考えていた。イブン・バーッジャによると、宇宙を構成するものの最下位の存在は、感覚的なもので占められており、この存在に知性は存在しない。知性としての人間の存在はこれより高度なものである。そしてより高度なものは、感性的な要素がなくなり、純粋に知性的な存在になるという。人間の知性の場合、感覚的なものはなくなるが、さらに上位に能動的な知性があり、人間の知性が最高位ではないという。最上位の存在、つまり人間よりもさらに上位であるが、これは最高に純粋な能動的な知性を持ち合わせた存在であり、この存在は、完全に幸福な存在であるという。この完全な知性との合一こそ、哲学が求めるものに他ならないのであり、この知性として存在(真理あるいは神)一になる時、最高の幸福が訪れるという。 このような、人間を含めたあらゆる存在者の中で、永遠的な能動的知性を最高の能力におき、人類の知性(これは個々の存在に還元されるものではなく、知性は人類全体に一なるものとして存在する考えていた)は、この能動的知性の流出に他ならないという考え方は、「知性唯一説」という形で後の中世スコラ哲学で大論争となった。これは後に述べるアヴェロエスの考えが基になっているが、起源はイブン・バーッジャといわれている。このよう知性的な神秘主義は、感覚的なものを排した傾向が認められ、ガザーリーのようなスーフィズムとは明らかに異質なものであった。 また前述のように、この哲学者は政治家としての顔も持っており、俗世の仕事で一杯であり、彼の希望でもあった哲学の仕事に打ち込むことがなかなかできなかった。それも反映して彼は、もっとも理性的な存在としての人間は、俗世から離れて一人孤独な道を歩まねばならないと考えていた。彼の代表作も「孤独者の嚮導」というタイトルである。この俗世(社会)と個人の関係は、次に現れるイブン・トファイルによって明確に意識されている。
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