イギリスでの実施状況
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/30 00:44 UTC 版)
「戦時猛獣処分」の記事における「イギリスでの実施状況」の解説
第二次世界大戦でドイツ軍の本土空襲(バトル・オブ・ブリテン)にさらされたイギリスでも、戦時猛獣処分が行われた。 ロンドン動物園では、開戦からまもなく、毒ヘビとサソリなどの無脊椎動物を逃亡予防のために殺処分した。25年間も爬虫類を担当してきた飼育員は、人目をはばからず泣いていた。しかし、そのほかの動物で事前に殺処分された例は無く、多くは被弾を避けるために片隅に集められ、ゾウなど一部の希少性の高い動物はホィップスネイド野生動物園に疎開させた。また、飼料不足から、アシカ2頭はアメリカへと疎開している。ロンドン動物園の受けた空襲被害は限定的で、直撃弾を受けたシマウマの飼育舎から1頭が逃亡したほか、猿山の柵が破壊されてアカゲザルが逃亡した程度だった。脱走した動物は、数日以内に再捕獲された。 北アイルランドのベルファスト動物園(en)では、1941年にベルファストがドイツ軍の爆撃圏内に入ったため、公安局(Ministry of Public Security)の命令で33頭の飼育動物が殺処分された。処分の対象にはライオンやオオカミ、ハイエナ、ホッキョクグマなどが含まれた。処分対象となった種は、戦後の1947年頃に再取得されるまでベルファスト動物園では見られなかった。一方、ゾウは処分を免れて戦争を生き延びたものがあった。中でも、シェイラ(Sheila)と名付けられた子供のゾウは、殺処分を避けるため、ある飼育員の家の裏庭に一時期の夜間は匿われていた。ベルファスト動物園によるとシェイラを保護していた人物は長らく詳細不明で、「ゾウの守護天使」と称されて同園史上の謎とされてきたが、2009年に、女性飼育員の一人が母親と一緒にシェイラを匿ったことが判明したという。この女性飼育員は、男性飼育員たちが出征したために代用職員となっていた人物で、他の職員の帰宅後に密かにシェイラを檻から出して近所の自宅に連れ帰り、また朝には動物園に戻していた。住民の通報で事件は発覚し、女性飼育員は解雇されたが、以後も空襲の夜には動物園を訪れてシェイラが怯えないようなだめていたという。
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