アーケオプテリクスの翼
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/02 02:26 UTC 版)
アーケオプテリクスの風切羽は現在の鳥類と同様に非対称で、尾羽はやや幅広になっている。したがって、主翼と尾翼は揚力を生じていたことが示唆される。しかしながら現在鳥類(例ハト)のように自力で羽ばたくのは不得手であり、グライダーのように滑空することが主な用途だったと考えられている。 アーケオプテリクスが骨太の胸骨や(胸筋の起点となる)竜骨突起を欠くことは、アーケオプテリクスの飛翔能力がさほど高くなかったことを示唆している。しかし、胸筋は厚いブーメランのような形状の叉骨や平板状の烏啄骨(前烏啄骨)、もしくは軟骨様の胸骨に連結していた可能性もある。アーケオプテリクスにおいて、肩甲骨・烏啄骨・上腕骨の各部を連結する肩関節窩が横を向いていることは、アーケオプテリクスは翼を背面まで持ち上げられなかったことを示唆している。羽ばたき飛行が可能な現生の鳥類では、肩関節窩は背側に向いており、打ち上げ (upstroke) 時には翼を背面まで持ち上げている。したがって、アーケオプテリクスは現生の鳥類と同じようには羽ばたけなかったであろうと考えられている。ただし、打ち下ろし (downstroke) のみによる補助のもとで滑空を行っていたことは考えられる。 アーケオプテリクスの翼は比較的大きいため、失速速度 (stall speed) は小さく、旋回半径も小さかったであろう。翼平面形は、翼幅が短く翼端が丸い、すなわちアスペクト比が小さいため、海鳥のような細長い(アスペクト比の大きな)翼に比べると抗力は大きい。しかしながら同時に、このような翼平面形は、灌木や茂みのような障害物の多い環境中を飛行するのに向いていたとも考えられる。実際に、現代の地上でそういった場所に生息するカラスやキジは、同じような翼平面形をしている。また、脚部から生じる非対称の「後羽」は、ミクロラプトル (Microraptor) のような小型獣脚類(ドロマエオサウルス科)に見られるものに似ており、空中での機動性向上に寄与していたと考えられている。Longrich (2006) によって後羽に関する詳細な研究が初めてなされ、これがアーケオプテリクスの有効翼の12%を占めることが示唆された。この脚部の羽が飛翔にどの程度貢献していたのかは定かでないが、主翼や尾翼の補助として、最大で失速速度を6%・旋回半径を12%程度小さくすることができたと考えられている。 Nudds & Dyke (2010) によれば、アーケオプテリクスおよび孔子鳥は羽ばたいて飛ぶことはできず、滑空したという。
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