アメリカ合衆国大統領及び州知事の拒否権
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/07 07:20 UTC 版)
「拒否権」の記事における「アメリカ合衆国大統領及び州知事の拒否権」の解説
アメリカ合衆国憲法第1条第7節では以下のことを定めている。 議会が制定した法案は国家元首である大統領に送付される。 大統領がこの法案を承認する場合は、法案への署名をもってこれが法律となる。署名をしなくても議会の会期中に日曜を除いて10日以上経過した際は法律となる。 大統領がこの法案を承認しない場合は法案に署名せず、承認出来ない理由を明記した別書を添えて、日曜を除いた10日以内に議会に差し戻す。 その場合議会は大統領が承認出来ない理由を十分に考慮した上で、必要に応じて法案に修正を加えた上で大統領に再送付するか、両院で3分の2以上の多数で再可決して大統領の署名無しで法律にする。 ただしこれらが会期内に出来ない時は廃案となる。 このうち3.が大統領の「拒否権(veto)」で、4.(の後半部分)が議会の「拒否権を覆す権利(override=上書き)」である。また5.の規定を利用して会期末日曜を除く10日以内に議会から送付された法案を大統領が手元に留め置いて廃案にすることを「握り潰し拒否権(ポケット・ビートー)」という。議会の両院それぞれで3分の2以上の賛成を得ることは至難の業であり、拒否権が行使された法案の中で4.後半の規定により法律になった割合は10パーセントを下回っている。 拒否権を最も多用した大統領は第32代のフランクリン・ルーズベルトで、12年間の在任中に635回も行使している。逆に第3代のトーマス・ジェファーソンは8年間の在任中に一度も行使していない(ジェファーソンを含み7人いる)。第43代のジョージ・W・ブッシュは例えば以下のような法案に対し拒否権を行使した。 2006年7月 ES細胞法案 2007年5月1日 イラク派遣部隊の撤退期限を持つ予算法案 2008年3月8日 テロ被疑者に対するウォーターボーディング(水責め)などの拷問を禁止する法案 またアメリカでは州知事にも項目別拒否権(英語版)という拒否権があり、州議会が提出した法案の一部を拒否出来る。この項目別拒否権は1996年のラインアイテム拒否権法(英語版)によって大統領も行使出来るようになり、連邦議会の無駄なポークバレル的な追加条項を削除出来るようになり、クリントン大統領は、82項目についてこの権限を行使した。しかしこの法律は1998年6月25日の連邦最高裁判所のクリントン対ニューヨーク市事件(英語版)の判決により違憲と判断された。 「アメリカ合衆国の政治」および「アメリカ合衆国大統領」も参照
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