アメリカでの研究生活
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/07 07:19 UTC 版)
1991年、ノーベル生理学・医学賞受賞者のジョセフ・ゴールドスタイン(Joseph Goldstein)、マイケル・ブラウン(Michael Brown)両テキサス大学医学部教授からスカウトされ、テキサス大学サウスウェスタンメディカルセンター准教授及びハワード・ヒューズ医学研究所准研究員に就任。ダラスに移住し、その後米国籍を取得している。 当時のフロアの両隣は、その後ノーベル賞受賞者となるトーマス・スードフ(Thomas Südhof)とブルース・ボイトラー(Bruce Beutler)の研究室だった。 1994年、エンドセリンあるいはエンドセリン受容体遺伝子の変異が神経堤由来組織の発生異常をもたらし、ヒルシュスプルング病の原因となることを突きとめた。 1998年、テキサス大学の柳沢研究室に留学していた櫻井武とともに、オーファン受容体の内因性リガンドとして新規神経伝達物質オレキシンを発見。その産生細胞が食欲や体重調節に関与する視床下部外側野にのみ存在し、オレキシンの急性中枢投与で摂食行動が促進されること、絶食後にはオレキシン産生が増加することが分かり、古代ギリシャ語で「食欲」を意味するorexisに因んでオレキシンと命名。ところが、マウスのオレキシン遺伝子を欠損させても、食欲減退や体重減少は見られなかった。長期の奮闘の末、マウスが夜行性であることから、夜間の行動を赤外線カメラで観察することを思いつく。その結果、活動していたマウスが突然動かなくなる症状に気づき、これがヒトの睡眠障害ナルコレプシーの症状と酷似していることを突き止め、オレキシンが睡眠覚醒を制御しているという発見に至った。 2000年には、スタンフォード大学の西野精治とエマニュエル・ミニョー(Emmanuel Mignot)が、ヒトのナルコレプシーもオレキシンの欠乏によって起こることを報告した。 その後2014年には、米国メルク株式会社が不眠症治療薬として開発したオレキシン受容体拮抗薬スボレキサントが承認された。2017年、柳沢は創薬化学者である長瀬博との共同研究でオレキシン受容体作動薬YNT-185を創出し、YNT-185がナルコレプシーの病因治療薬として有効であることをマウスにおいて示した。
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