指数平滑法とは? わかりやすく解説

Weblio 辞書 > 学問 > OR事典 > 指数平滑法の意味・解説 

指数平滑法

読み方しすうへいかつほう
【英】:exponential smoothing

概要

時系列データに対してウエイト付け平均行って平滑化する方式で, 過去さかのぼる程小さくなる指数型のウエイト付け採用している. 時系列逐次平滑化している基本式(定数モデル)は, 
m_{t}=ad_{t}+(1-a)m_{t-1}
\, で表わされる. ここで, m_t \,t \,時点ウエイト付けされた平均値(推定値), d_t \,t \,時点データ, a \,平滑化定数(0 \leq a \leq 1 \,)である. また, 時系列データ傾向季節変動がある場合直線傾向モデル季節型モデル開発されている.

詳説

1. 指数平滑法の基本式

 時間変化に従って与えられるデータ群, すなわち, 時系列データ (例え需要系列など) を用いた予測方式共通点は, 先行するデータ群をつぎに続くデータ群に関連づけて推定を行うことである. この方法の一つ指数平滑法の基礎となる方式移動平均法である. いま, t\, 時点移動平均値をm_t\, , 用いられるデータ群の項数l, (t-n)\, 時点データd_{t-n}\, とし, d_{t-n}\, 係数a_{n+1}\, とすれば, {\it t}\, 時点移動平均m_t\, は次式で表される.



m_{t}=a_{1}d_{t}+a_{2}d_{t-1}+{\cdots}+a_{l}d_{t-l+1}
\,      (1)\,

ただし, 
\ \sum_{n=1}^{l}a_{n}=1 
\,


 さて, 指数平滑法([1], [2])はこの(1)式の係数a_{1} ,a_{2},\cdots ,a_{l}\, に対して, 現在時点に近い程ウエイト大きくし, 過去さかのぼる程ウエイト小さくしていく指数型の考え方導入したもので, 指数加重移動平均法とも呼ばれている. すなわち, この方式による{\it t}\, 時点推定値m_t\, は次式のように表わされる. (ただし, 0 \leq 1-a \leq 1\, )



m_{t}=a\{d_{t}+(1-a)d_{t-1}+{\cdots}+(1-a)^{n}d_{t-n}+{\cdots}\}
\,      (2)\,


 この(2)式の重み係数a, a(1-a), a(1-a)^{2}, \cdots \cdots\, 総計は1となる. なお, この場合m_t\, ({\it t}+1)\, 時点予測値として用いられる. ここで, (2)式と同様な考え方m_{t-1}\, 算出すると次式が得られる.



m_{t-1}= a \{d_{t-1}+ (1-a) d_{t-2}+{\cdots}+ (1-a) ^{n-1} d_{t-n}+{\cdots}\}
\,      (3)\,


 (3)式の両辺(1-{\it a})\, 掛けて(2)式と対比すると, 次式のような指数平滑法の基本式(定数モデル)が導出される.



m_{t}= a d_{t}+ (1-a) m_{t-1}
\,      (4)\,


 この(4)式の係数{\it a}\, 平滑化定数呼んでいる.

2. 平滑化定数の値

 上記平滑化定数{\it a}\, は, 原則として, 0と1の間の値をとる. この中, {\it a}=1\, のときはm_{t}=d_{t}\, となり推定値同時点のデータ等しくなる. 一方, {\it a}=0\, のときはm_{t}=m_{t-1}\, となり推定値一時点前先行する推定値等しくなる. {\it a}\, 中間の(0<{\it a}<1)\, にとった場合にはある程度ランダムな変動影響を受けることになる. {\it a}\, の値を最適に決めることは難し問題であるが, 0.5より若干小さい値をとる場合比較的多い.

3. 傾向考慮した場合

 時系列データ傾向がない定数モデル場合には, (4)式のm_t\, ({\it t}+1)\, 時点有効な予測値となるが, もし, 上昇, あるいは下降傾向がある場合は, この値は不満足なものになる. この問題解決するために傾向考慮した指数平滑法(直線傾向モデル)が提案されている. このモデルでは2番目の変数としてt\, 時点傾向推定値r_tを導入している. この直線傾向モデルR. G. Brown[3], [4] により提示されたが, いま, ({\it t}+1)\, 時点予測値をy_t\, とすれば(5)(7)式のように表わされる.



y_{t}= m_{t}+{ \frac{1-a}{a}} r_{t}
\,      (5)\,


m_{t}= a d_{t}+ (1-a) m_{t-1}
\,      (6)\,


r_{t}= a (y_{t}- y_{t-1})+ (1-a) r_{t-1}
\,      (7)\,


 このモデル{\it k}\, 時点先の予測y_{t+k}\, は次式のように示される.



y_{t+k}= y_{t}+ k r_{t}
\,      (8)\,


 なお, (4)式や(5)式などで用いられているm_t\, r_t\, 初期値は, それまでデータにより推定される. それらの値はとくに重要な値ではないので比較単純な近似法を用いればよい.

4. 季節変動考慮した場合

 時系列データ季節変動がある場合には, 季節型モデル利用される. このモデル代表的なものP. R. Winters [5] によって提示されているが, いま, {\it t}\, 時点季節変動指数値S_t\, , 3つの平滑化定数それぞれ{\it a}, {\it b}, {\it c}\, とすればこのモデル(9)(11)式のように表わされる.



y_{t}= a \frac{d_{t}}{S_{t-L}}+(1-a) (y_{t-1}+ r_{t-1})
\,      (9)\,


S_{t}= b \frac{d_{t}}{y_{t}}+(1-b) S_{t-L}
\,      (10)\,


r_{t}= c (y_{t}- y_{t-1})+(1-c) r_{t-1}
\,      (11)\,


 ただし, t-L\, {\it t}\, より1年前の時点.

このモデル{\it k}\, 時点先の予測y_{t+k}\, は次式のように示される.



y_{t+k}= (y_{t}+k r_{t})S_{t+k-L}
\,      (12)\,


5. その他の指数平滑法

 上記以外のモデルとしては, y_{t-2}\, までを用いた2次モデル定数モデル推定値データとして同じモデル繰り返し用いる2重や3重のモデル提案されている.



参考文献

[1] I. C. I Monograph, No.2, Short-Term Forecasting, Imperial Chemical Industries Limited, 1964.

[2] C. C. Holt, Forecasting Seasonals and Trends by Exponentially Weighted Moving Averages, Carnegie Institute of Technology, Pittsburgh, Pennsylvania, 1957.

[3] R. G. Brown, Statistical Forecasting for Inventory Control, McGraw-Hill, 1959.

[4] R. G. Brown and R. F. Meyer, "The Fundamental Theorem of Exponential Smoothing," Operations Research, 19 (1961), 673-685.

[5] P. R. Winters, "Forecasting Sales by Exponentially Weighted Moving Averages," Management Science, 6 (1960), 324-342.

「OR事典」の他の用語
予測:  季節調整法  弱定常過程  技術予測  指数平滑法  捕食者/被食者モデル  時系列解析  生態学モデル



英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「指数平滑法」の関連用語

指数平滑法のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



指数平滑法のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
日本オペレーションズ・リサーチ学会日本オペレーションズ・リサーチ学会
Copyright (C) 2024 (社)日本オペレーションズ・リサーチ学会 All rights reserved.

©2024 GRAS Group, Inc.RSS