加茂競馬図目貫
端午の節句に関わる競い事の中でも、最もよく知られている加茂神社の競馬に取材した目貫。加茂の競馬は、宮中武徳殿において、八世紀奈良時代以前から行われていたといわれる神事としての勝負ごと。平安時代には毎年五月五日に行われる行事として定着し、親王をはじめとする地位の高い貴族が騎手となって二頭ずつ馬を走らせ、その速さを競ったものである。 初代石黒政常の手になる本作は赤銅地を極肉高に彫り出して量感と立体感を際立たせ、馬体の斑模様や着衣は量感のある平象嵌で、鬣(たてがみ)、尻尾は金の色絵。騎手の顔は銀と素胴の色絵とし、締まった顔を微細な彫刻で彫り表しており、両者の表情の違いを巧みに彫り分けている。また、騎馬の一方は今まさに地面を蹴ろうとする瞬間を捉え、他方は伸びやかに疾走する馬体を活写しており、僅か四センチに満たない小世界に躍動する騎馬武者の背後からは往時の見物人の歓声までもが聞こえてくるようである。 |
加茂競馬図目貫と同じ種類の言葉
- 加茂競馬図目貫のページへのリンク