『球体』三部作
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「ペーター・スローターダイク」の記事における「『球体』三部作」の解説
『球体』(Sphären) 三部作は、スローターダイクの代表作であり、第1巻は1998年、第2巻は1999年、最終巻は2004年にそれぞれ出版されている。日本語訳はない。 『球体』三部作は共在空間、すなわち一般的に見過ごされていたり、あるいは当然のものとみなされているものの、実際には人間理解を深める上で欠かすことが出来ない情報を秘めた諸空間についての著作である。その思索は、まず哺乳類とその他の動物との基本的な違いを吟味するところから始まる。つまり、哺乳類にのみ存在する子宮について述べられているわけだが、この子宮の持つ生物学的な快適性は、人類にとってある種の根源的な理想郷として想起される。そのため、人類は科学やイデオロギー、あるいは宗教を通じて子宮の心地よさを再現しようとするのである。スローターダイクは、実物の子宮内(「胎児-胎盤」といった存在論的な関係性)のような「小さな球体」から、「巨大な子宮」とでも言うべき民族や国家といった「大きな球体」に至るまで、人間が留まろうとしつつも叶わない「球体」を分析し、絶望やニヒリズム(自己陶酔的な孤立)といった生存の危機と「球体」が壊れるときに生じる危機との関連性を突き止める。 スローターダイクによれば、『球体』三部作の序盤は「ハイデガーが(『存在と時間』の副読本として)書くべきだった作品」としている。ここでスローターダイクが言及しているのは、自身が現存在という概念に対してハイデガーの立場から離れていく以前に持っていた考えについてである。
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