『歴史』
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/13 06:03 UTC 版)
「アンミアヌス・マルケリヌス」の記事における「『歴史』」の解説
アンミアヌスの書いた『歴史』(Res Gestae) はネルウァ帝の即位(96年)からウァレンス帝の戦死(378年)までを網羅している。これは、タキトゥスの『年代記』『同時代史』(ドミティアヌス帝の死までを扱う)の後継を自任していたからである。原本は31巻あったが、最初の13巻が失われた。現存するのはアンミアヌスの同時代史である後半18巻であり、ガルス副帝の死の前年(353年)からハドリアノポリスの戦い(378年)までが扱われている。 『歴史』は明晰かつ視野の広い著述から評価が高い。エドワード・ギボンは『ローマ帝国衰亡史』でアンミアヌスを「偏見や感情に流されない文章で、著者自身の時代を正確かつ誠実に書き記した案内人」と絶賛している。ただし、現在の研究者は『歴史』内にもこの時代に特徴的な誇張表現を指摘している。アンミアヌスは異教徒だったこともあり、キリスト教徒のコンスタンティウス2世よりも、異教徒のユリアヌスに好意的であったことも明らかになっている。しかし、『歴史』も公に出版することを意図したものである以上、単純さを犠牲にしてでも派手な記述を必要とする場合もあり、その誇張が問題にならない程度であることから、それをもって非難に値するものではないという評価が一般的である。 文学作品としての評価も高く、「タキトゥスからダンテの間に生まれた中で最も偉大な作家である」と語った人物もいる。その文体は荒々しく、大げさな表現やひどくあいまいな部分が散見されるものの、批評的な文章もあり社会・経済問題を見事に描き出している。ローマ帝国内にいる非ローマ人に対してはティトゥス・リウィウスやタキトゥスに比べてもより視野の広い姿勢を示している。自身が訪れた様々な国についての記述は特に興味がそそられる。 『歴史』の中でアンミアヌスは、度重なる外征による国内体制の疲弊、中流層の経済的没落、軍規の乱れにより崩壊していくローマ帝国を浮き彫りにする。それは彼の死後、20年にわたるゴート戦争によって帝国が衰退していくことを十分に予測させる。エーリヒ・アウエルバッハは、アンミアヌスを優れた表現力の持ち主とし、難解でなければ最も傑出した古代文学者だとした。その一方、彼はタキトゥスと同じく鳥瞰的でストイックな文体であるため、陰鬱な現実の内容と美文調がちぐはぐになり、しかも暗黒の対立物としての光明が示されないため恐ろしい内容であるとした。
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