『タッポーチョ』にまつわるエピソード
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/08/05 09:13 UTC 版)
「ドン・ジョーンズ」の記事における「『タッポーチョ』にまつわるエピソード」の解説
中村定「文庫本のための訳者あとがき」より。 大場栄本人による改訂は日本文から確定していった。まずジョーンズが書いた英文を中村が日本語に訳し、それを大場が確認。大場の異議に対して中村が代案を提示し、承認を得たものを中村が英訳してジョーンズに送った。 ジョーンズは映画化を第2の目標としており、物語を面白くする方向に走りがちだったが、一方の大場は事実に正確に記すことを望み、細かく異議を申し立てた。両者の調整を行なったのは訳者の中村だった。 ジョーンズには大場に対する強烈なイメージがあり、それを明確にするため一部フィクショナイズすることを譲らなかった。たとえば、大場自身は当時「玉砕することのみ考えていた」と言うのに対し、ジョーンズはそれを「生きのこって最後まで戦う」と変更した。 日本での出版に合わせて来日したジョーンズの各方面への精力的な働きかけにより、大場隊の生き残り全員(18名)をサイパンに連れて行き、慰霊祭を行なった。 日本語版出版時に映画化の話が出たが、ジョーンズがハリウッドでの映画化を希望してハリウッドに売り込んだものの、大場隊の中の動きが中心になっている内容が米国での映画化には適さない上に、英文での出版物がないことを指摘され、頓挫した。 その後出版された英語版について訳者の中村は「日本語版よりドラマタイズした翻案であることは間違いない」としている。 大場栄「タッポーチョ刊行に寄せて」より。 大場自身は、当初ジョーンズの「大場を主人公にした小説を書きたい」という申し出に対して「今さらアメリカ人に表彰されたくは無いし、あのころの自分たちの気持ちを分からない。下手をすれば誰かを傷つけるかもしれない」として断ったという。しかし、最終的にジョーンズの熱意に押され承諾した。 本作は大場大尉のサイパンでの実体験を元にした小説である。そのため、ところどころジョーンズがフィクションの筆を加えている箇所もある。大場自身も「起こったことの解釈が日本人と違うところもあった」「実際の抗戦中の生活はもっと暗く陰惨で、こんなに勇ましく米軍を手玉にとったようなこともなかった」としつつ、主なことはほとんど事実に即していると述べている。
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