「定理」の数学的な解釈
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/22 17:12 UTC 版)
「無限の猿定理」の記事における「「定理」の数学的な解釈」の解説
定理の主張に含まれる「十分長い」、「ほとんど確実」といった言葉は確率論およびその基礎となる解析学において厳密に定義された用語であり、したがって定理の主張は数学的に意味のある主張である。ただし「ほとんど確実に」という言葉は測度論に基づく確率論で用いられる語であり、主張の内容を正確に理解したり証明したりするには測度論を必要とする。証明にはボレル-カンテリの補題を用いる。 ここではそのような厳密な議論には立ち入らず、この定理の言わんとすることを初等的に考察してみる。話を簡単にするため、タイプライターのキーがちょうど100個あるとする (この数は実際のキー配列での数に近い)。例えば「monkey」という1単語からなる文章は全部で6文字あるので、ランダムにキーを叩いて、「monkey」とタイプされる確率は、 1 100 × 1 100 × 1 100 × 1 100 × 1 100 × 1 100 = ( 1 100 ) 6 = 1 10000000000000000 {\displaystyle {\begin{aligned}{\frac {1}{100}}\times {\frac {1}{100}}\times {\frac {1}{100}}\times {\frac {1}{100}}\times {\frac {1}{100}}\times {\frac {1}{100}}&=\left({\frac {1}{100}}\right)^{6}&={\frac {1}{10000000000000000}}\end{aligned}}} (1兆分の1) である (ここでは、タイプの一様性と独立性を仮定している)。これは非常に小さな確率であるが、0ではないため、猿が「ランダムに6個のキーを打つ」という操作を非常に多くの回数繰り返せば「monkey」という文字列がタイプされる確率は100%に非常に近くなる。 文章中の文字数が7つ、8つと増えるごとに、その文章が打たれる確率は減ってゆくが、いずれにせよ0にはならないから、7文字の文章であろうと8文字の文章であろうと、根気よくランダムにキーを打ち続ければ、いつかはその文章が打たれることになる。同様に考えれば、一冊に何万もの文字を含むシェイクスピアの著作であっても、いずれは打ち出されることになるのである。 しかし、文章が含む文字の数が増えれば増えるほど、その文章が打たれる確率は指数関数的に減少し、そのような文字列が現れるのに必要な時間の期待値はとてつもない速度で上昇していくことにも注意しなければならない(指数関数時間を参照)。例えば仮に1秒間に10万文字打てるとしても、たった100文字の文章を登場させるのに要する時間は100億年の1無量大数倍の1000京倍にもなる。まして、猿が『ハムレット』一冊を打つのにかかる時間は途方もない長さである。このように、理論上は有限の時間で猿はどんな文章でも打てるが、そのために要する時間は想像を絶するほど大きなものである。
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