「官製暴動」疑惑
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/11 13:51 UTC 版)
水晶の夜は自然発生した暴動ではなく、ナチ党政権による「官製暴動」であったとする説もある。特に関与が確実視されているのが宣伝相のヨーゼフ・ゲッベルスであり、彼がSA隊員や各管区の指導部を動員して行ったとされる。 もう1人、疑いがかかっているのは保安警察長官ラインハルト・ハイドリヒである。11月9日深夜には、ハイドリヒの部下であるゲシュタポ局長ハインリヒ・ミュラーが各地の秩序警察に「まもなくユダヤ人とシナゴーグに対する攻撃が始まるが、邪魔をしてはならない」と電報で命令している。さらに10日には、ハイドリヒ自身が全警察とSDに向けて次のように電報で命令した。「ドイツ人の生命と財産を危険にさらさないユダヤ人への攻撃は許すものとする」、「ユダヤ人の商店や住居はただ破壊するのみとせよ。略奪は認めない」、「商店街の非ユダヤ系商店が被害を受けないように留意せよ」、「外国籍の者はたとえユダヤ人でも被害を受けないよう留意せよ」。この電報のために、ハイドリヒの関与が疑われている。 一方、ハイドリヒの妻リナによると、水晶の夜が発生した際に彼は自宅で寝ていたが、家の警備をしていたSS隊員に起こされて暴動事件を聞かされ、驚いて急遽出勤したという。帰宅した後、ハイドリヒはリナに向かって「ゲッベルスがやったんだ。なんでゲッベルスはこんなことをしたんだろう?」と語ったと証言している。ハイドリヒの代理官ヴェルナー・ベストも「ゲッベルスの行動であり、ハイドリヒや私にとって全くの不意打ちの事件だった」と証言している。 ゲッベルスの部下である国民啓蒙・宣伝省映画部長フリッツ・ヒップラー(de:Fritz Hippler)によると、彼は11月9日夜の暴動を目撃しており、暴動を起こしている者たちが純粋な「住民」ではないことを見抜き、11月10日朝にゲッベルスにその旨を報告したが、彼は報告をはねのけたという。 ゲッベルスがナチ党幹部の中でもずば抜けて過激な反ユダヤ主義者であった事は事実である。ただ、警察やSSの協力なしこれだけの暴動を為し得ることができたかは疑問の声もある。それを考えると、ハイドリヒの電報による助力もかなり大きい関与と思われる。
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