「倫理の欠如」
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/08/02 22:23 UTC 版)
この「倫理の欠如」という意味でのモラルハザードは、英語のmoral hazardにはない日本独特の用法であり、海外ではほぼ通用しない。先述の「プリンシパル=エージェント問題」や「保険におけるモラル・ハザード」も含む考えである。 「モラル・ハザード」を日本語に翻訳する際、直訳されたため「道徳的危険」と訳された。そして、 保険に加入して自らが火災を起こす保険金詐欺 給食費を払わない親の増加 といった例をモラル・ハザードとして説明する際に、節度を失った非道徳的な利益追求を指すという解釈がなされた。日本で「モラル・ハザード」といえばこの意味をさすことが多い。しかし、このような「倫理・道徳観の欠如・崩壊・空洞化」という用法は、以前から誤用として識者に指摘されていた。2003年11月13日、国立国語研究所による『第二回「外来語」言い換え提案』によって、モラル・ハザードは「倫理崩壊」「倫理の欠如」との意味で用いられていた状況が報告されている。 本来、「モラル・ハザード」には道徳的な意味合いはない。そもそも、英語の “moral” には「道徳的」のほかに「心理的」「教訓的」といった用法もあり、モラルが「道徳」を意味するかどうかも一概には言えない。保険業や経済学における専門用語としての「モラル・ハザード」には上述の通り経済学的・保険業的な特別な意味があるので、この語を倫理・道徳と関連させて使う用法は正しくない。しかし、近年では国語辞典に「倫理の欠如」と定義されるなど、数多あるカタカナ語の一つとして定着しつつある。
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