韓国による天皇謝罪要求 日本の対応

韓国による天皇謝罪要求

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/12/17 16:06 UTC 版)

日本の対応

日本国会の謝罪要求撤回決議

8月24日、衆議院本会議にて李明博による天皇謝罪要求発言と島根県竹島への上陸に抗議する決議が提案され民主党自由民主党公明党みんなの党国民の生活が第一などの賛成により[24][25]日本共産党社会民主党の反対を押さえて採択された[25]。決議では天皇謝罪要求について「友好国の国家元首の発言として極めて非礼で決して容認できない」と発言の撤回を求めるとともに竹島占拠について「わが国固有の領土であるのは歴史的にも国際法上も疑いはない」「不法占拠を韓国が一刻も早く停止することを強く求める」とされた[24]

8月29日参議院本会議にて天皇謝罪要求発言と竹島への上陸に抗議する決議が提案され、民主党、自民党などの賛成により可決された[26][27]。決議では「友好国の国家元首が天皇陛下に対して行う発言として極めて非礼な発言であり、決して容認できないものであり、発言の撤回を求める」とされた[28]

天皇謝罪要求撤回に併せて提起された、竹島をめぐる国会決議は韓国が李承晩ラインを引いたのに対し、1953年11月に決議された日韓問題解決促進決議以来である[24][25]

批判

東京大学名誉教授坂本義和は、慰安婦問題などに関して日本政府の対応を批判しながらも、李明博によるこの発言は「明らかに失言」であり、「日本の戦争責任を日本のふつうの国民以上に痛感している点で、私も敬愛を惜しまない現天皇について、あまりに無知であり、恥ずべきである」と強く批判した[29][30]

日本共産党も「(いまの)天皇というのは憲法上、政治的権能をもっていない。その天皇に植民地支配の謝罪を求めるということ自体がそもそもおかしい。日本の政治制度を理解していないということになる。日本政府に対して、植民地支配の清算を求めるならわかるけど、天皇にそれを求めるのはそもそもスジが違う」とこれを批判している[31]

外交的配慮

2012年12月16日第46回衆議院議員総選挙が実施される約2ヶ月前の10月8日、総選挙による政権交代与党復帰の可能性が高いと予想された野党第一党・自民党の衆議院議員(元首相)麻生太郎は、韓国大統領府で李明博と会談した。天皇に謝罪を求めたとされる8月の発言について、麻生は会談後、報道陣に対し、「陛下に韓国に来いとか、謝れとかいったことはない、という話を(李大統領から)うかがった」と述べた[32]。一方、2013年2月15日に李明博大統領は韓国核武装肯定と竹島上陸は日本への先制である旨を語った際に、「日王は(自分の発言以後)『謝る用意もあり韓国を訪問したい』と明らかにしたという。実際より少し誇張されて自分の発言が伝えられた面がある」と、東亜日報のインタビューで明らかにした[33]

対韓感情への影響

この影響で、官民ともに交流事業の中止が相次いだ。また、韓国を訪れる日本人観光客も、ウォン高にシフトしていたことも相まって減少をし続け、2013年には長年日本人が1位であった入国者数でも、初めて中国人が1位になり、2位に転落することになった[34]。 

軍事的脅威

読売新聞とアメリカギャラップ社の共同調査[いつ?]によって「日本にとって軍事的な危険な国」として日本国民の37%が韓国を上げており、李明博の行動が影響を与えているとの分析がなされている[35]中央日報は、李明博の竹島上陸と合わせて、この謝罪要求によって、日本社会が嫌韓へと転じたと指摘している[36]


  1. ^ 天皇の朝鮮での蔑称。
  2. ^ 韓国人が「天皇」を「日王」と呼ぶのは、小中華思想に基づいた日本人蔑視が根底にあるとされる。西村幸祐は『「皇帝」以上の「天皇」という尊号を支那の皇帝に使うのならまだしも、倭人とさげす む日本人が使用することを彼らの妄想的な自尊心が許さないからだ。』とする。つまり、日本人への差別意識に基づく、一種の執着がそうさせているという。(西村 2012, p. 81)
  3. ^ a b c 共同 (2012年8月14日). “「心からの謝罪求める」と天皇訪問で韓国大統領 支持率上げる思惑か”. MSN産経ニュース (産経新聞社). オリジナルの2012年8月14日時点におけるアーカイブ。. https://megalodon.jp/2012-0814-1749-30/sankei.jp.msn.com/world/news/120814/kor12081416580001-n1.htm 2012年11月24日閲覧。 
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