電柱 電柱の概要

電柱

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/12/29 02:17 UTC 版)

市街地の電柱(遠隔制御開閉器・三相二回線)
山間部の電柱。6600 V高圧配電線の上に33,000 V送電線を架けている。

概要

電柱の役割

電柱の主たる設置目的、役割、機能は次のようなものである。

他にも次のような役割を兼ねている場合がある。

ただし、電線と共に景観に及ぼす影響が大きく、電線類地中化によりパリロンドンなど欧米の都市部では電柱はほぼ見られなくなっており[2]、日本でも首都圏などの中心市街地や、歴史地区美観地区では撤去作業が進んでいる。また、豪雪地帯では大量の着雪が問題となり、高所作業車を使うことが多いものの、1本ごとの人力での除雪や、周囲の道路交通の規制も必要となる。その一方、配線の拡張・増設や撤去、災害時の復旧などが埋設式に比べて簡単で、コストも低い。

種類、分類

電柱には電力会社送電配電を目的に設置する電柱(でんちゅう)もしくは電力柱(でんりょくちゅう)、通信会社通信用ケーブルを支持することを目的に設置する電柱(でんちゅう)もしくは電話柱(でんわちゅう)または電信柱(でんしんちゅう/でんしんばしら)、トロリーバスを含む電気鉄道において架線を張る(吊る)ための架線柱などがある。製で状のものは鉄塔と呼ばれる[3]

電柱は照明柱(街灯)や信号柱などとともにユーティリティポールとしてまとめられることがある[4]。共用のものは共用柱(きょうようちゅう)あるいは共架柱(きょうがちゅう)とも言う。

電柱の構成

電力供給用の電柱の付属設備

電力供給を行う電柱には、以下のような機器が取り付けられる。

電柱設置の力学、端末の技術

力学

電柱の強度や設置距離、様態についてはいくつかの数学理論や多くの材料工学による研究が提供されているが、経験学によるところも多く、様々な災害事象において充分な強度を保持しつつ経済性を維持することはなかなか困難な課題である。電力柱の場合、トランスだけでも100kgを優に超え、300kg-600kgになることもある。また電線そのものの自重、強風による風圧や振動により増幅された破壊圧などが電柱にダメージを与える。このほか立地点の地盤の強弱や、架線先の建物が震災などにより倒壊する際に引きずられ倒伏することなどがある。カラスの営巣も、電柱上部の設備に被害を与える可能性がある[5]

材料力学の観点では以下の公式が知られている。電線の単位長さ重量をw(N/m)、電柱間距離をB(m)、最低点の張力をT(N)、中央のたるみをH(m)としたとき、

様々な電柱(カナダオタワ

歴史

電信の商業化に最初に成功したのはイギリスのウィリアム・フォザーギル・クック英語版であるとされる。クックは1837年5月にチャールズ・ホイートストンと共に警報機としての電信機の特許を取得、このさい電柱からセラミック絶縁体によって電線を吊り下げるシステムも発明し特許を取得している[6]。1837年7月25日にはロンドンユーストン - カムデン・タウン間での実演に成功し[7]、そのシステムは1839年4月9日にパディントン駅からウェスト・ドレイトンまでの間、約21kmにわたってグレート・ウェスタン鉄道の線路を利用して敷設された[8]。もっともこのさいの電柱はタールで処理されたものであり耐久性が7年ほどしかなく、後に防腐剤としてクレオソートあるいは硫酸銅で処理されるようになった[6]

アメリカ合衆国では1844年にメリーランド州ボルチモアワシントンDC間の40マイルに電信回線が敷設された。これはサミュエル・モールスによりなされ、アメリカ合衆国議会が3万ドルをモールスに与えることで実施された。このケーブルは当初はで被覆されたものを7マイル分だけ地中に敷設してみたものの通信不良であり、鉛被覆を除いて電柱架設することで成功した。この際、ワシントンニュースペーパー紙に1844年2月7日、700本の製の柱の買い付け公告が掲載された。これらの一部はクレオソートによる防腐加工が施され、80年後にもまだ供用されていた[9]

欧米での電線地中化・無電柱化

電柱の存在は欧米の都市部では一般的ではない。パリロンドンでは電線の地中化がほぼ100 %となっており、完了している[10][2]。また、ニューヨークでは約70 %が地中化されている[2]

また、コストのかかる無電柱化を無理にせず、通り沿いではなく建物の裏側に電柱を配することで、道路、歩道、頭上空間を狭めることなく、同時に景観を守る方法もある。


注釈

  1. ^ 2極真空管が発明されたのが1904年、3極真空管が発明されたのが1906年、コヒーラ検波器の開発は1894年、フィルターが一般に普及し始めたのは1912年以降である。1870年代エミール・ボドーヒューズの電信装置を複数使った時分割多重化システムを開発し、1874年トーマス・エジソンは双方向に同時に2つずつのメッセージ(合計4つ)を送信できる四重電信機を開発していた。コンデンサと抵抗からなる初歩的なアナログフィルターは1880年代に実験的に利用されたが実用に耐えるものではなく、本格的に多重化通信が実用されるのは1920年代(AT&Tによる)以降である。
  2. ^ したがって、電柱の新設・撤去に際しては土工が発生する。
  3. ^ 山林や田畑などを通過させる場合など。引き込みの際に契約者(利用者)が自己所有する電柱や壁面、構内設備に架設しているような場合は除く。

出典

  1. ^ 電柱(でんちゅう)の意味”. goo国語辞書. 2019年11月24日閲覧。
  2. ^ a b c d e f g 木舟辰平『図解入門よくわかる最新発電・送電の基本と仕組み』秀和システム、2011年、129頁
  3. ^ 鉄塔 利用のご案内 東京電力パワーグリッド(2020年11月29日閲覧)
  4. ^ 「土木学会西部支部沖縄会 第5回技術研究発表会」琉球大学研究者交流会館・50周年記念会館 、2021年1月7日閲覧。
  5. ^ 電柱の上にカラスの巣を見つけたらご連絡ください 北陸電力送配電(2020年11月29日閲覧)
  6. ^ a b Kieve, Jeffrey L.,The Electric Telegraph: A Social and Economic History, David and Charles, 1973OCLC655205099.[1]
  7. ^ The telegraphic age dawns BT Group Connected Earth Online Museum. Accessed December 2010
  8. ^ Hubbard, Geoffrey (1965) Cooke and Wheatstone and the Invention of the Electric Telegraph, Routledge & Kegan Paul, London p. 78
  9. ^ James A. Taylor Timber Products Specialist Rural Electrification Administration U.S. Department of Agriculture Washington, D.C. (1978年). “Pole Maintenance-Its Need and Its Effectiveness”. American Wood Preservers' Association. 2011年4月7日閲覧。
  10. ^ なぜ東京には電柱があるのに、ロンドンには一本もないのか?”. NPO法人 電柱のない街づくり支援ネットワーク. 2021年4月30日閲覧。
  11. ^ a b 経済産業省・資源エネルギー庁「電力レジリエンス強化の観点からの無電柱化の推進について」(2021.5.25、資料4)[2]PDF-P.7
  12. ^ 北原聡「近代日本の道路と通信 - 電信電話の道路占用 -」『關西大學經済論集』第57巻第4号、関西大学、2008年3月、269-289頁、NAID 110007150555 をもとにこの項目起筆。
  13. ^ 函館市観光情報 はこぶら>箱館はじめて物語 日本最古のコンクリート電柱 ※2018年8月30日閲覧
  14. ^ 電柱税の税収が多い道府県|税の歴史クイズ|税務大学校|国税庁”. www.nta.go.jp. 2022年8月29日閲覧。
  15. ^ 電柱を活用した携帯電話向け位置情報提供サービス「ここデンチュ」サービスの試行について - 中部電力
  16. ^ 「電柱が宅配ボックスに 関電系が実験/物流の人手不足 解消に一役」『日経MJ』2020年11月23日(ライフスタイル面)
  17. ^ 『電気設備技術基準・解釈 平成22/23年版』P100, 第3章 電線路 第58条
  18. ^ a b NTT東日本への電柱添架申請書類「記載例」の「参考」として各地域の判別について記されている。「記入例」(防犯灯・街路灯・道路反射鏡・標識等の申請書類等)
  19. ^ 自販機や電信柱を探せ!? 現在地の住所を把握する方法
  20. ^ 日本自動販売システム機械工業会「安全対策」
  21. ^ 自販機にある住所表示ステッカー。どのような経緯で?またいつから掲示されていますか?
  22. ^ 「電信柱の広告」1890年5月30日時事新報『新聞集成明治編年史. 第七卷』国立国会図書館デジタルコレクション)
  23. ^ 「千葉・大規模停電 見えてきた課題」(時論公論)”. 日本放送協会(2019年9月17日作成). 2019年9月22日閲覧。
  24. ^ 無電柱化の推進に関する法律”. e-Gov. 2019年4月11日閲覧。
  25. ^ 人材教育・研修 採用情報 - トーエネック
  26. ^ 地図 - Google マップ航空写真)。


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