鉄道ファン
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鉄道ファンの使う道具
時刻表
鉄道ファンにとって時刻表とは、単に時刻を調べるための道具にとどまらず、様々な使用法がなされる。主なものは以下のとおり。
- 時刻表を見て、架空の旅行計画を立てる(机上旅行) - 沖縄県を除いた46都道府県(沖縄都市モノレールが2003年開業したので航空機を入れてここを含めて全部にする者もいる)の都道府県庁所在地をいかに早く周るかや、いかにJR最南端の西大山駅から最北端の稚内駅まで行くか等がある。
- 時刻表からダイヤグラムを作成する - 列車のすれ違い・行き違い箇所、追い抜き箇所、折り返しの運用などを推測する。
- 古い時刻表を見て、当時の列車状況などを調べる - 時刻表は当時の鉄道や旅行の様子を知る「資料」となるため、明治時代から昭和時代まで、大掛かりなダイヤ改正があった時期などを中心にいくつかの古い時刻表を復刻した「復刻版時刻表」が販売されることもある。ただし、国鉄は詳細な記録がまとめられているが、私鉄は巻末に大雑把にしか掲載されていない。そのため、各社から個別の時刻表が発売・配布されたり、広報誌が発行されるなど利用客に向けた周知活動が整う時代(大まかに1980年代頃)よりも前のダイヤを調査することは、困難な場合が多い。当然ながら、過去の時刻表には現在は廃止されてしまった駅や路線、列車、外地との航路を含む鉄道連絡船、国鉄バスなどの情報が記載されているので、現在では実現不可能[注釈 1]な鉄道旅行を空想する楽しみ方もできる。
旅行の際、大判の時刻表を持っていくのはかさばるからと携帯版の時刻表を持っていく、あるいは電子版や乗換案内アプリを利用するケースが増えているが、それでも大型時刻表を持っていく者も存在する。その理由として、複雑な旅行計画を組む鉄道ファンにとって、旅行中に万が一ダイヤが乱れた際行程を立て直すためにはどうしても情報量の多い大型時刻表が要ること、また、列車の中や待ち合わせ時間などの暇な際に情報量の多い大型時刻表を見るなどして時間つぶしをすることなどが挙げられる[注釈 2]。人によっては、大判時刻表の必要な部分だけをちぎったり、コピーする者もいる。
大型時刻表の発行元は現在では交通新聞社とJTBパブリッシングの2社に集約されたため、好みが大きく別れる。前者の『JR時刻表』はJR化以後の公式時刻表であり、優等列車が赤色表示なので分かりやすいこと、入線時刻や発車番線などの情報量が多いこと、後者の『JTB時刻表』は、国鉄時代において公式時刻表『国鉄監修 交通公社の時刻表』としての長い歴史があり、ページ割りも国鉄時代とほとんど同じであること、大都市近辺詳細図のページが会社別色別で見やすいこと、「グッたいむ」といった読者投稿のコラムが載っていることなどを、それぞれ利点として挙げている。
紀行作家の宮脇俊三は自著『時刻表2万キロ』において、自分の国鉄全線完乗を『「列車に乗る」のではなく「時刻表に乗る」』と評している。
2021年の『日本経済新聞』によると、鉄道貨物協会発行の『貨物時刻表』が交通・物流関係者だけでなく、貨物列車の撮影などを目的に鉄道ファンによる購入が増えている[6]。
カメラ
鉄道趣味、特に鉄道写真においてはカメラは欠かすことのできない道具である。望遠から広角まで様々な種類のレンズが必要になるため、一眼レフが好んで用いられる。特に一本限りの臨時列車など、一発勝負でミスできない撮影のために、プロ並みに複数のカメラを同時に準備する例もある。通勤中などに不意に変わった車両や変わった運用を目撃したときのため、小型軽量で携行の容易なコンパクトカメラを欠かさず携帯する鉄道ファンもいる。ただしカメラ付き携帯電話やタブレットコンピュータの普及で、これで代用するケースも増えており、近年ではスマートフォンのカメラ高性能化もあり、スマホで本格的な写真撮影を行う人も存在する。
そのほかに脚立と三脚も使うと便利である場合があり、有名な撮影ポイントやプラットホームの先端部分では三脚を立てたファンが集い、熾烈な場所取り合戦を展開することもある。ただし、混雑したり幅が狭いプラットホームにおいて三脚を立てるのはマナーの悪い行為とされ、持ち込み禁止の駅も存在する。このため、鉄道事業者側でも駅での三脚・脚立の使用自粛を求める動きが強まっている。駅でなくても、線路沿いの交通量の多い道路などで脚立を使うのは、迷惑行為であると同時に危険行為でもある。
鉄道写真を趣味とするファンはカメラメーカーのよい「お得意様」である。そのため、カメラメーカーが鉄道ファンを支援することもある。例えば富士写真フイルムは、「いい旅チャレンジ2万キロ」を後援していた時期もあり、キヤノンは、1977年から雑誌『鉄道ファン』でのコンテストを協賛している。鉄道趣味誌にカメラメーカーが広告を掲載することは現在でも多い。
注釈
- ^ 特に朝鮮半島では、軍事境界線付近と北朝鮮となったエリアでは、鉄道が残っていても自由に旅行することはできない。
- ^ かつて多数運行されていた夜行列車では枕代わりにもなった。
- ^ 「てっちゃん」「みっちゃん」ともに、アクセントは「ちゃ」の場所にある。なお、「鉄ちゃん」の語は、一般のゲームプレイヤーにも人気を博した鉄道運転ゲーム『電車でGO!』のナビゲーション役キャラクターの名前としても用いられている。
- ^ なお、1995年に連載・刊行が始まった、山口よしのぶの漫画『名物!たびてつ友の会』単行本の、読者からの手紙を紹介するページに既に「鉄子」の語が見えることから、1990年代には「鉄子」の語が存在していたことがうかがえる。
- ^ 2007年4月から同年6月までTBS系で放送されていたテレビドラマ『特急田中3号』では主に「テツ」の愛称を用いていた。
- ^ (内容のほとんどは鉄道とは関係ない)オタク文化を扱うテレビ番組において「鉄道オタク」という言葉が使われ(実際はそうでないにもかかわらず)鉄道趣味者は全員「オタク」であるかのような解説がなされていることや、鉄道ファンにオタク文化の代表である二次元や萌えアニメを好む人が多いことも、この語を浸透させる要因にもなっている。
- ^ 「『ガラパゴス化した日本の鉄道』そのものに興味を抱く人」と、「海外の鉄道に比べて日本の鉄道同士だと類似点が多く、プラスアルファという形で追究しやすいと感じる人」の2パターンがある。
- ^ 例えば、『鉄道ジャーナル』1997年3月号において、ヨーロッパの鉄道に関する特集を約50ページにわたって特集したが、当該月号の読者の人気投票では、日本国内の記事が軒並み上位に入り、日本国外の記事はいずれも不人気だった、という事例がある。
- ^ 鉄道のみならず、道路橋、道路トンネル、通信施設(電波塔)、軍事基地ではない空港・飛行場・港湾、国によってはスラムなども撮影が禁止されていることが多く、身柄を拘束された場合、撮影済みフィルムの没収や画像データの消去という処分が下される。
- ^ 鉄道ファンに対するものではないが、テレビ番組『世界の車窓から』の撮影班がテロ事件後のロケーション撮影においてニューヨーク・ペンシルベニア駅での撮影時に「2度尋問された」という案件があり、沿線での列車撮影時には「3度捕まった」ほか、サスケハナ川橋梁での撮影のためにカメラを設置していた際には貨物列車の運転士により警察に通報された、と撮影日記に記している。[8]
- ^ エスカレートしすぎたゆえに、1976年(昭和51年)には小学生が写真撮影のために線路敷内に侵入し、列車に轢かれて死亡する事故(京阪100年号事故)が発生し、大都市近辺における蒸気機関車の保存運転が事実上不可能となる(事故防止の沿線の警備にコストが掛かりすぎるため)など、結果としてファン自身の不利益になるような事態もある。
- ^ 車両自体は無償譲渡の場合が多い(鉄道会社にしてみれば、本来必要な解体費用がかからないため)が、保存・保管のための用地の準備、輸送・補修等に莫大な費用を要する。
- ^ こうした行為は俗に撮り鉄にかけて盗り鉄などと揶揄されている。
- ^ 杵屋栄二も戦災にあいコレクションを失っている。
出典
- ^ a b 乗り鉄入門:第1回 そもそも「乗り鉄」ってどんな趣味? マイナビニュース(2013年7月29日)2022年10月19日閲覧
- ^ <杜の都のチャレン人>絵を通じ人と人連結 鉄道復興を支援する「描き鉄」[リンク切れ]河北新報
- ^ 一例として:弘前市に「空想」の地下鉄路線図 大学生が考案、話題に 朝日新聞デジタル(2020年1月30日)2022年10月19日閲覧
- ^ 神奈川県高鉄連
- ^ 関東学鉄連公式ブログより
- ^ 「貨物時刻表 人気じわり 一般販売30年、年2万部迫る 特集や写真で読者つかむ」日本経済新聞ニュースサイト(2021年5月13日)2022年10月19日閲覧
- ^ 愛用の時刻表はどれ?「西村京太郎」創作の秘密 誰もが知りたかった疑問を鉄子が直撃 東洋経済オンライン(2019年4月27日)2022年10月19日閲覧
- ^ テレビ朝日・テレコムスタッフ. “アメリカ編 撮影日記”. 2018年8月11日閲覧。
- ^ MATERFER
- ^ BOM SINAL
- ^ Frateschi
- ^ MINITRENES FERROMODELISMO ARGENTINO
- ^ amigosdeltren.cl
- ^ CazaTrenes
- ^ Centro-Oeste.Brasil
- ^ REVISTA FERROVIÁRIA
- ^ Todo Trenes
- ^ REVISTA RDI
- ^ Tren Rodante
- ^ Ferroclub Argentino CDP Escalada
- ^ Ferroaficionados argentinos
- ^ Grupo Ferroaficionados Uruguay
- ^ 齊藤 啓介 (2021年6月26日). “開館準備進む、過去と未来をつなぐ台湾の国家鉄道博物館”. 公益財団法人ニッポンドットコム. 2022年4月28日閲覧。
- ^ 行くぞ!最果て!秘境×鉄道「モンゴル 絶景列車[リンク切れ]NHK(2020年5月12日閲覧)
- ^ 高蕾 (2021年5月14日). “民政部公布中国教育服務行業協会等12家涉嫌非法社会組織名單”. 新華社 2022年7月28日閲覧。
- ^ 「“ワル鉄”暗躍? 廃線間近な三木鉄道で盗難相次ぐ[リンク切れ]」産経新聞(2008年3月19日)
- ^ 寄せ書きノート9冊なくなる 「秘境」で人気のJR坪尻駅(三好)[リンク切れ]徳島新聞(2009年4月24日)
- ^ 「秘境駅のスタンプまた受難 坪尻駅から盗難?8月下旬になくなる」徳島新聞(2018年12月18日)
- ^ 列車から車内放送用の機器盗まれる JR北「不届き者」朝日新聞(2016年5月20日)
- ^ 特急のヘッドマークなど134点盗んだ疑い 男を追送検 朝日新聞(2016年6月3日)
- ^ 「SL撮影の邪魔?鉄道標識なくなる 山口、窃盗容疑捜査」朝日新聞(2017年8月1日)
- ^ 「撮り鉄」侵入でJRに遅れ 関西線の線路脇に三脚 日本経済新聞ニュースサイト掲載の共同通信記事(2010年5月9日)
- ^ 「秘境駅」撮影、線路に入った会社員を書類送検 読売新聞(2012年2月21日)
- ^ 沿線で勝手に樹木伐採「刈り撮り鉄」の大問題 撮影の邪魔?他人の所有物なら器物損壊罪に 東洋経済オンライン(2021年5月8日)2022年10月19日閲覧
- ^ 「詐欺事件:鉄子と呼ばれる鉄道好きの女、JR西制服を詐取容疑」毎日新聞(2013年2月26日)
- ^ 東武6050系電車や東武10000系電車等の増解結を伴う運用をする形式には必ずその旨が車内貫通扉上に記載されている。
- ^ 「線路内の“撮り鉄”慌てて逃げるも……電車は緊急停止」ANN(2021年3月26日)
- ^ 『鉄道ファン』1986年11月号,p.132
- ^ 『鉄道ファン』1994年6月号,p.135
- ^ 坂上茂樹「高木 蒸気機関車技術論に対する疑問以上のもの」大阪市立大学大学院経済学研究科 Discussion Paper No.118, 2019年4月3日(PDF)
- ^ 「おいこら、どけぇ! 下がれ!」 迫る「Xデー」“葬式鉄”暴走を警戒する関係者(3/7)産経デジタルiza 2015年1月22日
- ^ 株式会社野村総合研究所広報部『NRIニュースレターVol.38 データ潮流:延べ172万人、4110億円規模の「オタク」市場』 (PDF) [リンク切れ](2005年10月20日)
- ^ (繁体字中国語)有社會關懷的熱愛 就不會變壞蘇昭旭老師的全球鐵道視野部落格
- ^ (繁体字中国語)[1]2015年11月20日,聯合報
- ^ (繁体字中国語)鐵道迷瘋「京急700」 闖淨空區3米近拍害列車急煞2016年12月12日,ETNEWS
- ^ (繁体字中国語)直接闖進軌道、禁入也硬擠! 鐵道迷搶拍光華號行為超脫序2016年10月30日,ETNEWS
- ^ 伊藤一郎「鉄道趣味のあゆみ」『鉄道ジャーナル』1972年10月号、P76
- ^ 「鉄道省令第17号 国有鉄道軍用資源秘密保護規則」『官報』1939年9月28日(国立国会図書館デジタルコレクション)
- ^ 【TOKYO発】有料撮影会も次々 撮り鉄ブームのいま 日常の姿にも鉄道愛を/最長寿月刊誌1000号編集長に聞く『東京新聞』朝刊2022年6月15日26面(2023年8月15日閲覧)
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